2021年8月16日

家族信託を始めるときの必要書類と取得方法

家族信託を始めるときの必要書類と取得方法

最近はテレビや雑誌でも特集が組まれるほどに注目されるようになってきた家族信託。皆様も興味を持たれている方が多いと思います。ただ、家族信託を始めようにも何から手を付けてよいのかわからないといった方もいるでしょう。そこで今回は、家族信託を始める際に必要となる書類とその取得方法について解説します。

※ ここで解説する書類はあくまでも一般的に必要とされているものです。実際は状況により、必要となる書類に多少の変動があります。

書類が必要となる場面について

家族信託開始の流れを簡単に説明すると、

  1. ① 家族間の話し合い及び法律専門家への相談
  2. ② 信託契約書の作成
  3. ③ 信託契約書の公正証書化(※1)
  4. ④ 信託財産の名義変更

となっています。このなかで書類が必要となる主な場面をあげると、

  • 信託契約書を作成するとき
  • 信託契約書を公正証書化するとき
  • 信託財産の名義変更するとき(不動産の所有権移転登記及び信託登記を申請するとき※2)

となります。また、場合によっては他の場面でも必要書類が生ずることがあります。

※1 信託契約書の公正証書化についての解説はこちら

※2 不動産を信託財産とする場合、信託登記は義務となっています(信託法第34条)。それに対して、所有権移転登記は任意ですが、所有権移転登記を行っていなければ、自らの権利を第三者に対抗できずに受託者としての権利行使ができないので、結局は信託登記と所有権移転登記は必ずセットで行うこととなります。

家族信託を始めるときに必要な書類

ここでは必要書類を「信託契約当事者に関する書類」と「信託財産(不動産)に関する書類」に分けて解説します。

信託契約当事者に関する書類

① 本人確認資料

運転免許証(運転経歴証)やマイナンバーカード、パスポートなどです(有効期限内のものに限る)

【必要となる場面】

信託契約書を公正証書化する際に本人確認のために必要です。また、法律専門家や金融機関へ相談する際にも提示が要求されることが考えられます。
財産の所有者である委託者と財産を託され管理や処分を行う受託者のものが必要となります。
場合によっては受益者や信託監督人などのものも提示を要求されることがあります。

【取得方法】

それぞれの書類によって異なります。

② 戸籍謄本/抄本・住民票

戸籍謄本/抄本は戸籍に記録されている身分事項を証明するものです。戸籍謄本では戸籍に記録されている全員の身分事項、戸籍抄本では記録されている一人または複数の身分事項が記載されています。記載事項は「本籍」、「筆頭者氏名」「氏名」「生年月日」「父、母の氏名」「出生地」、「婚姻日」などです。住民票は市区町村が発行する住民の居住関係を証明する書類です。記載事項は「氏名」「生年月日」「性別」「住所」「住民となった年月日」「届出日及び従前の住所」などです。

【必要となる場面】

信託契約書には契約当事者の氏名、住所、生年月日等を正確に記載する必要があります。そのため、家族信託に関与する全ての人たち(委託者、受託者、受益者、信託監督人、受益者代理人など)の戸籍謄本/抄本・住民票を取得し確認する必要があります。
また、信託財産に不動産が含まれる場合、所有権移転登記及び信託登記には、受託者の住民票が必要となります。

【取得方法】

いずれも市区町村の役場(主に住民課)で取得することが可能です。役場の窓口で直接請求することはもちろん、それが難しい場合は代理人による取得や郵送による取得も可能です。また、発行する市区町村によってはコンビニでも取得することができます(※3)。その際には「マイナンバーカード」もしくは「住民基本台帳カード」が必要となります(※4)

【参考】総務省

※3 戸籍謄本等をコンビニで取得可能な市区町村について
https://www.lg-waps.go.jp/01-04.html

※4 戸籍謄本等をコンビニで取得する方法について
本籍地の戸籍証明書取得方法 https://www.lg-waps.go.jp/01-06.html
証明書の取得方法 https://www.lg-waps.go.jp/01-01.html

③ 印鑑証明書・実印

市区町村に印鑑登録を行うと、登録した印鑑が実印となります。そして、その印鑑が実印であることを証する書類が印鑑証明書です。

【必要となる場面】

信託契約書を公正証書化する際に公証役場に印鑑証明書を提出します。その際には委託者と受託者のものを用意します。また、信託財産に不動産が含まれる場合、所有権移転登記及び信託登記には委託者の印鑑証明書が必要となります。
信託する不動産が複数ある場合、必要となる印鑑証明書も複数になる場合があります。なお、いずれの場合も3か月以内に発行されたものが必要となりますので取得する際には日付に注意する必要があります。

【取得方法】

まず、実印登録がお済みでない場合はお住いの市区町村の役場(主に住民課)で実印登録をする必要があります。実印登録が完了したら、同じ窓口で印鑑証明書を取得することができます。また、戸籍謄本等と同様に発行する市区町村によってはコンビニでも取得することができます。

信託財産(不動産)に関する書類

① 登記事項証明書(登記簿謄本)

登記事項証明書とはその名の通り登記に記録されている事項についての証明書です。表題部と権利部に区別して記載されていて、表題部には不動産そのものの情報が記載されています。(土地は「所在・地番・地目・面積」建物は「所在・家屋番号・種類・構造・床面積」)権利部はさらに甲区と乙区があり、甲区には所有者に関する事項が、乙区には所有権以外の権利に関する事項が記載されています。

【必要となる場面】

信託契約書を公正証書化する際に、信託財産に関する資料として必要となります。また、信託契約書には、契約当事者と同様に信託財産についても正確に記載する必要があります。そのため、登記事項証明書で所在や地番などを調べる必要があります。
なお、状況次第では委託者が所有する不動産が全て記載されている名寄帳や当該不動産の公図・地積測量図などの取得が必要な場合があります。

【取得方法】

法務局で取得可能です。当該不動産を管轄している法務局のみならず全国どこの法務局でも可能です。なお、請求する際には不動産の住所ではなくて、地番の情報が必要となります。地番がわからなかったとしても、多くの場合において当該不動産を管轄する法務局に問い合わせればわかります。また、オンラインで請求することも可能です(※5)

【参考】法務局

※5 登記事項証明書のオンライン請求について
http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/category_00003.html

② 固定資産税評価証明書

固定資産税の課税のために土地や家屋などの資産につけられる価格を、固定資産税評価額といいます。そして、それを証する書類が固定資産税評価証明書です。不動産登記にかかる登録免許税の算定や相続税・贈与税の申告、訴訟の手数料の算定の際に使用されます。

【必要となる場面】

登記事項証明書と同様、信託契約書を公正証書化する際に必要となります。また、所有権移転登記及び信託登記の際に登録免許税の算出根拠として提出します(※6)

【取得方法】

市町村の役場(主に資産税課)で取得可能です。ただし、東京23区の場合は都税事務所が窓口となります。代理人による取得や郵送による取得、市区町村によってはコンビニでも取得することができます(詳しくは当該不動産が存ずる市区町村にお問い合わせください)
なお、固定資産評価額は年度毎に更新されますが、提出する固定資産税評価証明書はその年度のものが必要となります。更新は毎年4月に行われますので、例えば2021年3月以前に取得した固定資産評価証明書は、2021年4月以降には提出することができなくなります。

※6 信託を原因とする所有権移転及び信託登記の登録免許税は、信託分として土地は不動産の評価額の0.3%(令和5年3月31日までの軽減措置)建物は0.4%となっています(所有権移転分は非課税)。

③ 登記済証・登記識別情報通知書

俗に「不動産の権利証」と呼ばれるものです。所有権などの権利の登記をしたとき、登記完了後に登記所から権利を取得したものに渡されます。かつては登記申請書の写し(副本)に登記官が「登記済」と押印をしたもの(登記済証)を渡していましたが、現在は12桁の暗号が記載された書面(登記識別情報通知書)となっています。

【必要となる場面】

所有権移転登記・信託登記の際に登記名義人の本人確認のために必要となります。登記済証の場合はそれ自体を提出します(還付は可能)。登記識別情報通知書の場合はそれに記載されている暗号が分かればよいので、原本でも写しでも別の用紙に暗号を記載したものでも提出は可能です。
なお、登記識別情報は不動産ごとに設定されています。さらに共有名義だった場合は共有者ごとに暗号があります。例えば、土地と建物をAさんとBさんで共有している場合、登記識別情報は「Aさん持分の土地・Aさん持分の建物・Bさん持分の土地・Bさん持分の建物」の4つがあるということです。これらの不動産を所有権移転する際は4つ全ての登記識別情報が必要です。

【取得方法】

前述のとおり、登記が完了した際に登記官より渡されています。なお、紛失等があっても再発行されることはありません。

【登記済証・登記識別情報通知書がない場合の登記について】

なかには登記済証や登記識別情報通知書を紛失してしまったという場合もあると思います。その際には「事前通知」もしくは「資格者代理人による本人確認情報の提供の制度」のどちらかを利用して登記の申請を行うこととなります。

・事前通知

事前通知では、登記所から登記名義人あてに、「事前通知」を郵送することにより本人確認を行います。この「事前通知」とは、登記済証を提供すべき登記名義人の住所地にあてて、本人限定受取郵便により、登記の申請があった旨、及びその申請の内容が真実であるときは2週間以内にその旨の申出をすべき旨の通知をし、この通知に対して、2週間以内に申請に間違いがない旨の申出がされることによって、本人からの申請であることを確認するというものです。

・資格者代理人による本人確認情報の提供の制度

司法書士などの資格者が本人であることを確認した旨の書類(本人確認情報)を提供する方法でも登記の申請はできます。なお、事前通知の方法では手数料はかかりませんが、司法書士などに「本人確認情報」を作成してもらう場合には、そのための手数料がかかる場合もあります。

まとめ

今回は家族信託の必要書類について解説しました。繰り返しになりますが、解説した書類はあくまでも一般的に必要とされているものであり、状況により必要となる書類は多少の変動があります。

家族信託の始めから終わりまで

始めるときの必要書類と取得方法

まず受託者がするべきこと

途中で変更する方法とその手続き

家族信託終了後の実務

坂寄 賢一

坂寄 賢一(行政書士・家族信託専門士)

 

『このコラムの内容は掲載日時点の情報に基づいています。最新の統計や法令等が反映されていない場合がありますのでご注意ください。個別具体的な法律や税務等に関する相談は、必ず自身の責任において各専門家に行ってください。』

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