2021年9月21日

始める前に知っておこう!家族信託終了後の実務

始める前に知っておこう!家族信託終了後の実務

家族信託は信託法に定められた事由や信託契約で定めた事由によって終了します。また、委託者と受益者の合意によって、いつでもやめることができます(信託法第164条)。ただ、家族信託が終了したからといって、それで全てが終わりということではありません。家族信託の終了により、様々な後処理が必要となります。本記事は家族信託が終了した後の実務について解説します。「始める前から終わる時のこと考えるの?」と感じる方もいるかと思います。しかし、家族信託を始める際に締結する信託契約では、「清算受託者」や「残余財産の帰属権利者」等の終了後に関する事項を定めることが可能となっています。それらを定める際には、終了後についても十分に考える必要があることは言うまでもありません。

家族信託の終了事由についてはこちら

信託財産の清算

家族信託が終了すると、信託財産の清算を行います。清算とは、債権や債務を解消することです。例えば、信託財産である賃貸不動産においては、未受領となっている賃料等の回収を行います。また、信託財産に関する負債(信託財産を担保にした借入等)や未払いとなっている固定資産税等の公課・公税及び業務委託費用等がある場合は、それらを信託財産から支払います。

これらの清算を行う者を「清算受託者」といいます
また、信託終了時に信託財産であった不動産を売却する権限を清算受託者に与えることができます。その際には、売却手続きやそれに伴う納税等も清算受託者が行います。
清算受託者は、信託終了時の受託者が就任することが多いですが、法律専門家等の別の者が就任することもできます。清算受託者は信託契約で指定することが可能です。具体的には「清算受託者は○○○○とする。」や「清算受託者は、本件信託終了時の受託者とする。受託者が清算受託者に就任しない場合、信託監督人が清算受託者に就任する。」等と定めます。

【注意】
信託財産の残額が清算金額に満たない、つまり信託財産が赤字になってしまった場合、その責任は信託財産を管理していた受託者が負うことになります。受託者は個人財産でその赤字分を補填する義務があり、その金額に制限のない無限責任を負います

残余財産の分配

清算後に残っている信託財産を「残余財産」といい、残余財産を受け取る人を「帰属権利者」といいます。清算が済んだら、帰属権利者への残余財産の分配を清算受託者が行います。帰属権利者は信託契約に定めておくことができます。具体的には「本件信託が終了した場合、本件信託の残余の信託財産については、○○○○に帰属させる。」等です。また、帰属権利者は複数にすることも可能であり、例えば、現金は長男に、不動産は長女に帰属させるといったこともできます。また、「本件信託終了時の受益者にその受益権割合に応じて帰属させる。」といった取り決めも可能です。
なお、このような取り決めは遺言的な機能を有しています。そのため、委託者や受益者の死亡を原因として信託を終了させた場合、信託契約に帰属権利者が指定されている残余財産については、遺産分割を行う必要はありません。なお、帰属権利者の指定がない場合や、帰属権利者として指定された者が既に死亡している、またはその権利を放棄した場合、残余財産は委託者に戻されます。なお、委託者が死亡していた場合は委託者の相続人に残余財産は渡ります(同法第182条第2項)
残余財産が不動産の場合、受託者から帰属権利者への所有権移転登記を行います。その際には同時に信託抹消登記も行います。登録免許税について、抹消分は一つの不動産につき1,000円です。所有権移転分は帰属権利者によって税率が異なります。なお、信託終了に伴って、必要となる登記費用や登録免許税も信託財産から支払います。

所有権移転分の税率についてはこちら

その他の事務処理

信託口口座(信託専用口座)の解約

信託財産となった現金は、受託者名義の信託口口座又は信託専用口座で管理されているのが一般的です。家族信託が終了したら、清算を行い、残余財産を帰属権利者に分配した後に、これらの口座を金融機関の指示に従って解約します。

「受益者別調書」の作成と提出

家族信託の終了に伴い「受益者別調書」を作成し、受託者の信託事務を行う営業所等の所在地の所轄税務署長に提出します。期限は終了事由が生じた月の翌月末日です(例:9月に家族信託が終了したら、提出期限は10月31日)。なお、「残余財産がない場合」や「受益者ごとの信託財産の評価額が50万円以下の場合」「信託終了直前の受益者と帰属権利者が同一である場合」には、提出は不要です。

税務申告

家族信託の終了により残余財産の分配が行われる際、帰属権利者が委託者の場合には課税はありませんが、それ以外の場合は課税の対象となります。具体的には死亡以外の財産の無償移転には贈与税、「死亡」による財産の無償移転には相続税が発生しますので、それらの申告と納税を行う必要があります。

関係人への通知

信託財産である建物に掛けられている火災保険や地震保険の名義変更や固定資産税や水道光熱費が自動引き落としになっている場合の口座の変更手続きを行います。
なお、賃貸不動産が信託財産になっている場合は、賃料の振込先口座を帰属権利者の口座に変更する旨を入居者または管理会社等の関係者への通知をします。また、場合によっては管理会社との間の管理委託契約を締結し直す必要があります。

まとめ

以上が家族信託終了後の実務です。信託契約の締結はスタートであり、ゴールではありません。家族信託の終了、そしてその後の実務の完遂こそがゴールといえるでしょう。安心して家族信託に取り組むためには、当事者のそれぞれが、家族信託における「始めから終わりまで」の流れを知っておくことが重要です。ぜひ以下のリンクのコラムも合わせてご覧ください。皆様が家族信託を検討していただく際の一助になれば幸いです。

坂寄 賢一

坂寄 賢一(「家族信託の相談窓口」家族信託専門士)

 

『このコラムの内容は掲載日時点の情報に基づいています。最新の統計や法令等が反映されていない場合がありますのでご注意ください。個別具体的な法律や税務等に関する相談は、必ず自身の責任において各専門家に行ってください。』

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