家族信託のメリットとデメリット

不動産所有者が家族信託でどのようなことを実現できるのか、どのような特徴があるのか、メリット・デメリットについて考えてみましょう。

家族信託のメリットについて

ただし、複数の不動産を所有するケースでは、信託財産となっている不動産に関する不動産所得に損失が出ていても、信託財産となっていない不動産に関する不動産所得と「損益通算」ができないため、この点を踏まえて信託設計をする必要があります。

家族信託のデメリットやリスクについて

家族信託を利用することによるデメリットやリスクとして、1)受託者へ権限が集中することによる不公平感 2)受託者の負担 3)身上保護権がない、などが言われることがあります。1)に関しては、家族信託は十分な家族間の話し合いを前提に資産凍結リスク等の対策とするものですので、これをデメリットとすること自体が的外れな議論です。何もしないとこによるリスクと比較した場合のメリットのほうが大きいと言えるでしょう。 2)については、成年後見制度の親族後見人でも同様に負担が生じますので、家族信託に限ったことではありません。 3)については後見制度との併用という現実的な選択肢がありますので問題はないでしょう。なお、家族信託のリスクではありませんが、適法で実効性のある信託契約であるかどうかは大きな問題です。家族信託に精通した専門家はまだ少ないため、知識と経験のある専門家(司法書士・行政書士等)に家族信託の相談、コンサルティングを依頼すべきでしょう。

家族信託の費用について

最後に、家族信託にかかるコストについて見ていきましょう。家族信託では、受託者である家族へ報酬を払う必要はありませんが(支払うことも可能)、導入する際にイニシャルコストが必要となります。具体的には、信託設計に関するコンサルティング報酬、信託契約書を公正証書にするための費用(専門家への報酬や公証人手数料)、登記手続きに関する費用などです。しかし、仮に資産が凍結されてしまい、成年後見制度を利用せざるを得なくなった場合、後見人が管理する財産の額によって月額2~6万円程度の後見人報酬が発生することになり、被後見人の方が亡くなるまでの間、数十万~数百万円のコストがかかることになってしまいます。しかも成年後見制度では後見人による柔軟な財産の管理や処分、活用などはできません。成年後見制度との比較では、家族信託の導入コストは決して高くはないということがお分かりいただけると思います。将来にわたる財産管理・資産承継の不安を解消できることを踏まえれば、相応のコストであると言えるのではないでしょうか。

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