2021年6月1日

その家族信託は余命一年?家族信託が終了してしまう事由

家族信託が当事者の意向に反して、強制的に終了してしまう場合とは

「老後も安心して暮らしたい」「自分にもしものことがあっても残された家族の生活を守りたい」「円滑円満な資産承継を実現させたい」様々な想いを込めて取り組んだ家族信託。
そんな家族信託が当事者の意向に反して、強制的に終了してしまう場合があることをご存じでしょうか。本記事では注意すべき家族信託の終了事由とその対策について説明いたします。

目次
1.家族信託の終了事由
2.注意すべき終了事由
3.まとめ

1.家族信託の終了事由

家族信託は信託法に基づいて、家族間で締結する信託契約によって財産の管理を行うものです。信託の終了事由は以下のようなものが信託法に定められています。

  • 信託の目的を達成したとき。
  • 信託の目的を達成することができなくなったとき。
  • 受託者が受益権の全部を固有財産で有する状態が一年間継続したとき。
  • 受託者が欠けた場合であって、新受託者が就任しない状態が一年間継続したとき。
  • 受託者が費用等の償還又は費用の前払を受けることができないために信託を終了させたとき。
  • 信託の併合がされたとき。
  • 信託の終了を命ずる裁判があったとき。
  • 信託財産についての破産手続開始の決定があったとき。
  • 委託者が破産手続開始の決定、再生手続開始の決定又は更生手続開始の決定を受けた場合において、信託契約の解除がされたとき。
  • 委託者及び受益者の合意で信託を終了させたとき。

この他に家族信託の終了事由を信託契約の中で個別に定めることも出来ます。
よく見られる終了事由としては「○○が死亡したとき」や「受託者と受益者が合意したとき」などがあります。

2.注意すべき終了事由

これらの終了事由の中で注意すべきものについて説明します。

(1)受託者が受益権(信託財産から得られる収益を受け取る権利)の全部を固有財産で有する状態が一年間継続したとき。

これはわかりやすくいえば、受託者と受益者が同一になり、その状態が一年間継続すると家族信託が強制的に終了するということです。例えば、こんな事例が考えられます。

委託者:親 受託者:子 受益者:親→子→孫

委託者である親の資産を、受託者である子に信託し、受益者を親とする。そして、受益権を親が亡くなったら子へ、子が亡くなったら孫へと承継させていこうとする家族信託の例です(このように受益権を承継させていく信託を受益者連続型信託といいます)
この家族信託において、親が死亡し受益権が子へ承継されると、子は受託者と受益者を兼ねることになります。そして、この状態が一年間継続すると家族信託は強制的に終了となり、孫に受益権を承継することは出来なくなります。
家族信託には二次相続以降の承継先の指定も出来るというメリットがありますが、この点に注意しないと、そのメリットを十分に活かすことが出来ないまま家族信託が終了するという事態に陥ってしまいます。
このような事態を回避する手段として、あらかじめ子の次の受託者(第二受託者といいます)を定めておいたり、信託開始時に第二受託者を決められない場合は受益者に受託者を指定できる権限を与えておいたりするとよいでしょう。また、受託者を法人とすることも一つの手段として考えられます。
なお、受託者と受益者が同一というのは「全くの同一」という意味であります。
そのため子が複数いて、「受託者:子A 受益者:子A及び子B」となっている場合は全くの同一ではないため終了事由には該当しません。

(2) 受託者が欠けた場合であって、新受託者が就任しない状態が一年間継続したとき。

以下の事由が発生した場合、個人の受託者の任務は終了します。

  • 受託者が死亡したとき。
  • 受託者が後見開始又は保佐開始の審判を受けたとき。
  • 受託者が破産手続開始の決定を受けたとき(受託者の任務が終了しない旨を定めることも出来ます)

認知症対策として「委託者:親 受託者:子 受益者:親」とする信託契約を締結した場合を考えてみましょう。

この家族信託において、上記の事由により受託者(子)の任務が終了した場合、信託契約はどうなってしまうでしょうか。信託契約に特段の定めがなければ、委託者及び受益者(この場合は親)が新たな受託者を選任する必要がありますが、親がすでに認知症を発症していたために、新たな受託者を決めること出来ず、受託者不在のまま1年が経過すると、信託契約は強制的に終了してしまいます。このままでは家族信託の目的を達成することが困難となってしまいます。
このような事態を回避するためにあらかじめ第二受託者を定めておけば、スムーズな受託者の引継ぎが可能となります。また、先程と同様に受託者を法人とすることも選択肢の一つとなります。
なお、受託者が死亡しても信託財産は相続財産の対象とはなりえません。ただし相続人には受託者の死亡を受益者へ通知する義務、新しい受託者が決まるまで信託財産を保管する義務などが課せられます。

3.まとめ

以上が注意すべき家族信託の終了事由になります。家族信託は一度開始すると、場合によっては何十年も存続するものです。そして、その間に何が起こるかは予想しえません。家族信託の目的を完遂させるためには、様々な事態を想定したうえで信託契約を設計することが大変重要となってきます。「家族信託の相談窓口」では家族信託に精通した家族信託専門士である登録専門家が個々の状況に応じて信託契約を設計させていただきます。どうぞ、安心してご相談ください。

坂寄 賢一

坂寄 賢一(「家族信託の相談窓口」家族信託専門士)

 

『このコラムの内容は掲載日時点の情報に基づいています。最新の統計や法令等が反映されていない場合がありますのでご注意ください。個別具体的な法律や税務等に関する相談は、必ず自身の責任において各専門家に行ってください。』

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