後見制度支援信託や後見制度支援預金をご存じですか?概要や利用方法を解説!

後見制度支援信託や後見制度支援預金をご存じですか?概要や利用方法を解説!

2022年3月、「成年後見制度利用促進基本計画」が閣議決定されました。今回のコラムでは、基本計画に盛り込まれた後見制度支援信託及び後見制度支援預金の利用の拡充について、その概要から利用するための手続きについて解説します。

これらの制度ができた背景

後見制度支援信託・後見制度支援預金ができた背景の一つに後見人による不正(横領)の横行があります。
後見人は被後見人の全財産を管理するという強い権限を持っています。さらに後見人には本人の財産を他の親族などに開示する義務はありません。そのため、意思能力を喪失した本人はもちろんのこと、他の親族でさえも親族後見人が不正に被後見人の財産を横領していることに気が付きにくいのです。過去最悪であった平成26年には年間約51億6,000万円もの被害があり、不正防止は大きな課題でした。

後見制度支援信託

まずは後見制度支援信託から解説します。

後見制度支援信託とは、成年後見制度を利用した際に被後見人の財産である金銭のうち、日常の生活費などには使用する金銭を後見人が管理し、それ以上の額の金銭(日常では使用しない金銭)を信託銀行等に信託する制度です。
重要なポイントは信託された金銭の払い戻しを受ける、信託契約を解約するためには家庭裁判所の指示書が必要となることです。
つまり、後見人が信託された金銭は後見人が自由に扱うことができなくなるのです。ちなみに、後見人の手元に残る金銭は100万円~500万円ほどに調整されることになります。

このように後見人が自由に扱える金銭財産を制限することにより、親族後見人の不正を防止することが可能となります。

後見制度支援信託の流れ

では、後見制度支援信託を利用するにはどのような手続きが必要なのでしょうか。

まず、親族等から後見開始の申立てが行われると、家庭裁判所は後見審判とともに後見制度支援信託を利用すべきか否かを検討します。裁判所が後見制度支援信託を利用すべきだと判断した場合、申立人に後見制度支援信託の利用を提案します。もちろん、利用するかどうかは本人や申立人の任意であり、裁判所が後見制度支援信託の利用を強要することはありません。ただし、その場合、裁判所は専門職後見人を選任する、成年後見監督人を選任するなど別の手段を講じる場合があります。

後見制度支援信託を利用することが決まると、後見人(弁護士や司法書士などの専門職後見人)が選任され、被後見人の金銭財産は専門職後見人の管理下に置かれます。専門職後見人は財産をどのくらいの額を信託財産とするのか、どの信託銀行に信託するのかなどを本人に代わって決定していきます。その後、家庭裁判所に報告書を提出します。家庭裁判所はその報告書を確認後、専門職後見人に対して指示書を発行します。そして、専門職後見人はその指示書をもって、信託銀行と信託契約を締結します。締結後、専門職後見人が後見業務に関わる必要がなくなると、専門職後見人は辞任し、管理していた財産は親族後見人に引き継がれることになります

後見制度支援信託の費用

後見制度支援信託に利用にかかる費用は信託契約の締結に関与した専門職後見人への報酬と信託銀行等への手数料があります。まず、専門職後見人への報酬に関しては、明確な基準はなく、家庭裁判所が,専門職後見人の行った仕事の内容やご本人の資産状況等のいろいろな事情を考慮して決めます。信託銀行への手数料においても信託財産の額によって異なりますので、事前に信託銀行に問い合わせることを推奨します。

確かに後見制度支援信託を利用するには、ある程度の費用が必要となります。しかし、前述の通り、後見制度支援信託を利用しない場合、専門職後見人や後見監督人が選任される可能性があります。被後見人の財産額にもよりますが、専門職後見人が選任された場合には月額3~6万円、後見監督人の場合でも月額1~3万円の報酬が発生します。結局は後見制度支援信託を利用したほうが経済的だったということもあり得るのです。なお、これらの報酬は被後見人の財産から払われるので親族などが身銭を切るといったことはありません。

後見制度支援預金

次に後見制度支援預金について解説します。
簡単にいうと後見制度支援預金は後見制度支援信託の預金版です。被後見人の財産のなかから一定の金銭(通常の生活費では使用しない金銭)を金融機関の口座に預け入れる制度です。後見制度支援信託と同じく、預貯金の払い戻しや口座の解約には家庭裁判所の指示書が必要になり、後見人が自由に扱える金銭に制限をかけることが可能となります。

後見制度支援信託との違い

後見制度支援預金と後見制度支援信託はその目的など、とてもよく似た制度です。では、この2つにはどのような違いがあるのでしょうか。

① 専門職後見人の介在

後見制度支援信託では開始時に専門職後見人が信託契約等の手続きを担当します。
それに対して後見制度支援預金では必ずしも専門職後見人が関わる必要はなく、親族後見人のみで手続きを行うことも可能です。

② 対応する金融機関

後見制度支援信託に対応しているのは信託銀行になります。そのため、地域によっては被後見人や後見人の近くに信託銀行がない場合もあります。
それに対して、後見制度支援預金を扱うのは銀行や信用金庫なので、当事者のより身近にあることが多いです。

※ 後見制度支援信託では電話に問い合わせや郵送による手続きなどにも対応しているため、当事者の近くに信託銀行が無くても利用することが可能です

後見制度支援預金の手続きの流れ

後見制度支援預金を利用する手続きの流れは専門職後見人の関与の有無によって大別されます。

専門職後見人が選任された場合

専門職後見人が選任された場合は後見制度支援信託とほぼ同じ手続きです。つまり、専門職後見人が後見制度支援預金に係る報告書を作成し、家庭裁判所がそれを確認し指示書を発行。専門職後見人が指示書に基づき後見制度支援預金の契約を締結することになります。

親族後見人のみが選任された場合

まず親族後見人は本人に関する調査(生活状況や財産状況など)を行い、報告書を作成します。そして、それを財産目録などとともに家庭裁判所に提出します。家庭裁判所はその報告書を確認し、その内容に問題がないと判断したら、親族後見人に対して、後見制度支援預金の利用を促します。その後の流れは後見制度支援預金に関する報告書の作成→指示書の交付→後見制度支援預金契約の締結と専門職後見人の場合と同じ流れになります。

制度利用後の後見事務

後見制度支援信託や後見制度支援預金の利用がされると、被後見の日常に必要な金銭は後見人が、それ以上の金銭は信託や預金に回されることになります。そして、前述の通り、それらの金銭を引き出す際には、家庭裁判所の指示書が必要になります。なお、指示書の交付を受けるには、金銭が必要な理由をうらづける書類とともに報告書を家庭裁判所に提出する必要があります。また、本人に収入があるなどして、後見人が管理する現金が一定の額を超えた場合には追加で信託や預金を行うことができますが、その際にも家庭裁判所の指示書が必要です。

まとめ

以上が後見制度支援信託および後見制度支援預金についての解説でした。

なお、これらの制度は後見制度の中でも法定後見制度にのみ適用される制度です。任意後見制度や保佐制度、補助制度では利用することができません。また、利用できる財産は金銭に限られ、不動産などに利用することはできません。また、親族間に争いがあるなど専門職後見人の継続的な関与が必要な事案などこれらの制度が適さない場合もあります。

【参考】任意後見制度・保佐制度・補助制度

任意後見制度…本人の意思能力が十分なうちに成年後見人となる者を指名しておき、意思能力が低下したときに備えておく後見制度。
保佐制度…精神上の障害(認知症,知的障害,精神障害など)によって判断能力が著しく不十分な方(本人)を保護するための制度。保佐人や本人は本人が保佐人の同意を得ずに自ら行った重要な法律行為(借財、保証、不動産その他重要な財産の売買等)に関しては,取り消すことができる。
補助制度…精神上の障害(認知症、知的障害、精神障害など)によって判断能力が不十分な方(本人)を保護するための制度。当事者が申し立てた特定の法律行為ついて補助人が代理して行うもしくは本人が補助人の許可なく行った法律行為を取り消すことができる。

成年後見制度が開始された2000年当初は後見人全体に占める親族後見人は90%を超えていました。しかし、その後は次第に専門職後見人が選任される割合が増え2013年には専門職後見人の法が多く選任されるようになりました(親族後見人42% 専門職後見人47%)
そして、2021年では専門職後見人は後見事件全体の約69%、対して親族後見人は約20%となっています。これは親族後見人の候補者自体の減少もありますが、親族後見人の不正の多さから家庭裁判所が親族後見人の選任に消極的になったことも一因に挙げられます。

この状況に対して、2019年に最高裁判所は「後見人にふさわしい親族などが身近にいること」を条件付きに「成年後見人には親族が好ましい」という考えを示しました。

親族後見人の積極的な選任とそれによる不正の防止。この2つを両立させるためのこれらの制度はこれからも重要なものであるといえるでしょう。

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