2022年8月16日

市民後見人とは?
今後活躍が期待される後見人の成り手について解説!

市民後見人とは?<br>今後活躍が期待される後見人の成り手について解説!

2022年3月、「成年後見制度利用促進基本計画」が閣議決定されました。成年後見制度の利用促進が叫ばれる中、新たな担い手として期待されているのが「市民後見人」です。今回のコラムでは、まだあまり知られていない市民後見人について解説します。

市民後見人とは

市民後見について最高裁判所は『弁護士、司法書士、社会福祉士、税理士、行政書士、精神保健福祉士及び社会保険労務士以外の自然人のうち、本人と親族関係(6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族)及び交友関係がなく、社会貢献のため、地方自治体等が行う後見人養成講座などにより成年後見制度に関する一定の知識や技術・態度を身に付けた上、他人の成年後見人等になることを希望している者』と定義しています。

つまり簡単にいえば、市民後見人とは専門職後見人でも親族後見人でもない、成年後見人として必要な知識や技術が備わっている方です。

※ 参考:最高裁判所事務総局家庭局『成年後見関係事件の概況 令和3年1月~12月』

市民後見人の事務

市民後見人が行う事務については親族後見人や専門職後見人との大きな差はなく、財産管理と身上保護となります。ただし、被後見人が所有している不動産の売却手続きや被後見人の代わりに遺産分割協議に参加するなどの高度な財産管理は担当しません。具体的な市民後見人の後見事務は以下のようなものになります。

  • 被後見人に生活費に関する出入金
  • 被後見人への定期的な訪問
  • 介護サービス事業者との話し合った上での、介護サービスの利用契約の変更。
  • 家庭裁判所へ報告するための財産目録や収支状況報告書を作成

市民後見人になるには

次に市民後見人になる方法について説明します。なお、市民後見人の成り方については「個人で後見人に就任する場合」と「支援員として後見に携わる場合」に分類されます。

個人で後見人に就任する場合

個人で市民後見になるには、初めに成年後見人としての知識や経験を身に着ける必要があります。まず、知識については市町村が行う基礎研修や実践研修などを受講することにより身に着けます。次に市町村社会福祉協議会(以下、社協)が行う法人後見事業のサポーター活動など行うことにより実際に後見人としての経験を積みます。

後見人としての知識や経験を身に着けると、市町村が整備する市民後見候補者名簿に登録されます。その後、市町村から後見人として推薦され、家庭裁判所から後見人に選任されることによって市民後見人となります。なお、選任の形としては市民後見人のみが選任される単独選任型、市民後見人の他に専門職後見人や社協が共に後見人として選任される複数選任型、後見人に選任されるのは市民後見人のみであるが、後見監督人として法律専門職や社協が後見に携わる監督人選任型があります。

支援員として後見に携わる場合

この場合においても、まず後見人としての知識や経験を身に着けて、市民後見候補者名簿に登録されることが必要になります。その後に社協などの後見を実施する機関と労働契約を結びます。そして社協が法人として受任してきた後見事件に後見支援員として後見事務に携わる形により市民後見人となります。

市民後見人が選任されるケース

令和3年、全国では39,571件の後見事件の申し立てがありました。その中で市民後見人が選任されたのは320件であり、市民後見人が選任される割合は1%にも満たないものとなっています。ちなみにもっとも選任されているのは司法書士で8,207件(全体の約20%)です。
選任数自体は少ないものの、後見事件の中には市民後見人が必要なケースがあります。
それが「親族後見人にも専門職後見人にも対応が難しいケース」です。

まず、親族後見人についてですが、後見の申し立て時に親族の候補者がいなければ親族後見人が選任されることはありません。当然のことですが頼りになる身内がいない場合には親族後見人では対応できません。ちなみに申し立てをする親族がおらず、後見を必要としていても申し立てができない場合はその方が住む市区町村の首長が後見の申し立てを行うことがあります。さらに頼りになる身内がいない方の中で資産が少なく生活に困窮している方にとっては、専門職後見人に払う後見報酬が負担になってしまうでしょう。
このように「頼りになる身内がおらず財産に乏しい」方に市民後見人は必要されていると考えられます。

※ 後見の申し立ての費用や後見報酬が支払えず、後見制度を必要としているのに利用できない方を対象とした「成年後見制度利用支援事業」を行っている市区町村もあります。詳しくは各市区町村にお問い合わせください。

市民後見人が選任されないケース

逆に市民後見人が選任されないケースもあります。
市民後見人は後見人として知識や経験を身に付けているものの、高度な法的知識を有しているわけではありません。また、多額の財産を管理する、親族間との諍いを納めるといったことにたけているわけでもありません。そのため、以下のようなケースでは市民後見人は選任されません。

  • 不動産の処分、相続や遺産分割などの対応を要する
  • 急迫した虐待や権利侵害や親族間紛争がある
  • 被後見人に自傷他害の恐れがある場合
  • 福祉的援助について緊急性がある場合
  • 被後見人が高額な資産を有しており財産の管理が複雑な場合
  • 市民後見人の選任に申立人(親族)の理解が得られない場合

ちなみにこのような場合には原則、専門職後見人が選任されます。

市民後見人の報酬

さて、市民後見人は他の後見人と同様に後見報酬を受け取ることができるのでしょうか。
結論から言えば、報酬の額は各家庭裁判所によって異なります。ただし、報酬額の相場としては専門職後見人の後見報酬を下回るものとなっています。また、ボランティアとして無報酬で後見人を行う場合もあります。

市民後見人を後見人の候補者にできるのか

このように市民後見人の後見報酬は無報酬、もしくは専門職後見人の後見報酬よりも安価です。では、市民後見人を候補者とすれば安価に後見制度を利用することができるかというと残念ながらそうではありません。市民後見人を後見人の候補にすることはできませんので、注意が必要です。市民後見人はあくまでも身寄りのない方や生活困窮者のための制度といえるのです。

まとめ

以上が市民後見人についての解説でした。前述の通り市民後見人が後見人に選任される割合は1%にも満たないものとなっています。市民後見人が選任されにくい要因の一つにそもそも市民後見人の候補者が少ないことが挙げられます。そこで成年後見制度利用促進基本計画では都道府県と市区町村の協働による市民後見人候補者の育成を実施することが期待される旨の考えが示されました。

今後も長寿化により、後見制度の需要は高まっていくものと考えられます。それに伴い、親族後見人にも専門職後見人にも対応が難しい後見事件も増加するものと考えられます。(その証左として申し立てを行う身内がいない場合に行われる市長による後見申し立ては年々増加しています)
市民後見人がそのような後見事件の受け皿となることに後見制度の利用は促進されると考えられます。そのような観点からも市民後見人は今後ますます重要になってくるでしょう。

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『このコラムの内容は掲載日時点の情報に基づいています。最新の統計や法令等が反映されていない場合がありますのでご注意ください。個別具体的な法律や税務等に関する相談は、必ず自身の責任において各専門家に行ってください。』

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