家族信託を活用した未上場企業の事業承継対策

家族信託を活用した未上場企業の事業承継対策

国内の未上場企業では意思決定権を社長が掌握することが多く、その高齢化に伴って「認知症による事業凍結リスク」が高まります。そうかと言って、まだ元気なうちにこれと決めた後継者にバトンを渡そうと考えても、教え込んだ先代のスキルが十分に生かされるか不安でなりません。そこで認知症による資産凍結対策の最適解となるのが、家族信託の仕組みを利用した「段階的な事業承継」です。

本記事では、中小企業で経営者が認知症と診断された時のリスクと共に、親族への事業承継で家族信託をどう活かせるか、詳しく解説します。

家族信託による事業承継とは

家族信託とは、重要な資産を「信託財産」として切り出しつつ、当事者のプランを内容に落とし込み、信頼できる親族に管理処分を委ねる契約です。未上場企業における親族内承継の手段とするのであれば、現経営者の有する「議決権付きの株式」を信託財産とし、次期経営者に管理処分を行ってもらいます。
この時、現経営者が株主として利益を得る権利は「受益権」として留保できます。ただ、議決権を行使するのは、株主名簿に受託者として記載された次期経営者です(会社法第154条の2)。現経営者の自社株にかかる権利のうち、議決権だけを信託設定によって切り出し、後継者に移動させるイメージです。

【家族信託による事業承継のイメージ】

  1. 1.信託設定
    … 事実上の経営者は次期社長になる
    ※株主名簿には先代社長と次期社長の両方の名が記載される
  2. 2.認知症と診断された時
    … 次期社長が議決権を行使し、会社法に基づく代表者交代の手続きを取る
  3. 3.信託の終了(先代社長の死亡)
    … 信託財産の残余分(=自社株)が次期社長に帰属し、事業承継が完了する

経営者が認知症になった時のリスク

国内の未上場企業の多くは、議決権の過半数を掌握する「オーナー社長」を擁します。加えて、中小規模の会社を中心に「生涯現役」の意識が多く見受けられます。
しかし、高齢化に伴う健康上の不安、特に認知症発症リスクは無視しがたいものです。そして、社長の身に万一のことがあれば、後述のように社長の権限の強さが裏目に出ます。必要な後任人事が進まず、事業も一時的な凍結状態に陥ってしまうのです。

事態は、社内あるいは株主同士の人間関係と相まって、後継者争い、親族が後任であることに不満を持つ社員の離反、対外的信用の低下……といった連鎖反応を起こしかねません。
その先に待つのは、会社の崩壊という最悪の結果です。

代表取締役の解任・解職ができない

まず、現経営者の判断能力が低下したからと言って、その代表取締役の地位がただちに失われることはありません。認知症等を発症した時点では、融資等の契約締結、訴訟、そして議決権行使といった法律行為が一切出来なくなり(民法第3条の2)、個人的に有する資産が凍結されるだけです。

一方で、現代表者の「議決権を行使できる大株主」という立場は失われません。つまり、代表取締役の個人名義の資産と共に、会社の意思決定権まで凍結されてしまうのです。
会社はその利益のために、やむなく株主総会で現代表取締役を解任・解職しようとしますが、必要な議決権を動かせない以上、対処できません。

後見開始後も経営者交代には時間&リスクが付きまとう

とはいえ、現経営者について後見が開始されれば、取締役の欠格事由(会社法第331条)に該当してその地位は失われます。新しい代表者は取締役会で選定され(法第362条2項3号)、その決議に関する定足数を満たすための株主総会(法329条1項・法第341条)が必要になったとしても、後見人が前経営者の議決権を行使できます。

ただ、必ずしも「会社のオーナーの意志を継げる人物」が後見人になるとは限りません。任意後見契約がない限り、経営に明るくない人物が後見人に選任される可能性があるのです。そうなれば当然、本来あるべき意思決定は行われません。後見人の判断を支える社員あるいは取引先によって、モラルハザードに起因する経済的損失を被る可能性もあります。

【参考】成年後見制度の仕組み

成年後見制度には、「法定後見」と「任意後見」の2種類があります。判断能力が低下した時の制度の選択は、あらかじめ本人と候補者との間で任意後見契約が締結されていない場合、家裁がその権限で後見人を選任する「法定後見」となります。

家族信託で経営者の認知症に備える5つのメリット

中小企業庁による令和元年度分の調査結果https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2020/chusho/b1_3_2.htmlでは、全国の社長の58.4%が60歳以上に達しています。この年代は認知症リスクの有病率が高く、万一の時に後任人事で躓かないよう、社長が元気なうちに事業承継対策しておくことが求められます。

次なる課題は、事業承継対策の方法です。かつては、1つは自社株を生前贈与または売却して現社長が「引退」する方法、もう1つは次期社長を任意後見人および自社株の相続人とする方法とのように、選択肢は2つに限られていました。
3つ目の方法として「家族信託」という選択肢が加わったのは、平成19年の信託法改正以降です。この方法は、後任の育成状況や相続トラブルに対する懸念を一挙に解決する「段階的な事業承継」を可能にする点で、従来の方法よりも優れています。

万一の時の経営者交代がスムーズになる

家族信託の第1のメリットは、認知症発症時に必要な代表者交代の手続きがスムーズに進む点です。
いったん家族信託を設定すると、委託者の状態に関わらず終了事由を満たすまで効力が生じます。そして、認知症と診断されたために自社株にかかる所有権が凍結されたとしても、次期社長の元にある議決権には何の影響も与えません。よって、代表者交代の手続きは後見開始を待たずに始められ、もちろん経営に明るくない人物の手に議決権が委ねられる心配もありません。

経営のモニタリングを継続できる

対策を実行した時から次期社長が議決権を行使できるという点では、従来実施されていた「自社株の譲渡」による事業承継との違いはありません。
決定的な違い、かつ家族信託に特有のメリットと言えるのは、元気なうちは現職が経営権を掌握し、次期社長の務めぶりを監督できる点です。

信託法では、受託者の権限に制限を加えることが認められています(第26条)。財産管理は基本的に受託者の自由ですが、当事者が合意すれば、委託者が適宜指示できるとする契約内容にしても良いのです。この「指図権」の設定さえあれば、受託者=次期社長の議決権行使に関し、先代が元気なうちは議案の賛否について指示を出せるようになるのです。

種類株式の発行に伴う法的手続きを省略できる

家族信託の第3のメリットは、株式に譲渡制限等が付いていない限り、設定にあたって会社法に基づく手続きをする必要はない点です。あくまでも既に発行された株式にかかる手続きであり、新株発行や定款変更を伴うわけではないからです。
ひいては、オーナー社長の高齢化が相当進んでいる場合等、対策実施のスピード感が求められるケースで有用です。

【参考】種類株式を用いた事業承継対策のやり方

自社株の譲渡による事業承継では、「拒否権付種類株式」(黄金株)によって経営のモニタリング体制を維持する手法があります。議決権が次期社長の手に渡っても、先代社長の手元に上記種類株式を残すことで、事実上の経営権は留保されるのです。
ただ、新しい種類株式の発行にあたっては、株主総会の決議により定款変更しなければなりません(会社法第466条・第309条2項11号)。既存の種類株式がある場合は、株主の利益を損ねる恐れがあることから、当該種類株主総会での決議も必要です(会社法第322条1項1号イ)

株式の承継にかかる税の対策にもなる

家族信託の第4のメリットは、納税資金がなくても設定できることです。
自社株を譲渡する場合は、財産権の移動に伴い、贈与税あるいは譲渡所得税が賦課されます(下記参考1・参考2)。一方の家族信託は、株主として利益を得る権利=財産権を「受益権」として先代社長に留保すれば、設定時点での課税の判定は回避できます。基礎控除額を十分に確保できる相続開始時まで課税を遅らせる等、適宜対策がとれるのです。

【参考1】自社株を生前贈与(無償で譲渡)場合

無償で財産を得た後継者について、贈与税が賦課されます。暦年課税に比べて控除額が拡大される「相続時精算課税制度」の利用という手もありますが(110万円→2,500万円)、その名の通り、相続税の課税価格に贈与時点の自社株の評価額を含めなくてはなりません。

【参考2】自社株を売却(有償で譲渡)する場合

対価を得た現経営者について、譲渡所得税が課税されます。また、譲渡所得税や後継者の原資不足を理由に「著しく低い価額」で譲渡した場合は、その割引分について贈与したものとみなされ、相続人に贈与税が賦課されます。

※ 生前贈与または相続による事業承継では、一定の要件を満たせば納税猶予と課税免除を受けられる場合があります(詳細は後述)

遺留分や二次承継にも対策できる

会社経営者が家族信託を選択した場合のみ得られるメリットとして、最後に「相続対策を兼ねられる」点が挙げられます。
いよいよ次期社長が株式を相続する段階になると、2つの問題が生じます。1つは株式以外の資産を十分確保できなかったことに由来する「遺留分問題」、もう1つは「二次相続時の株式分散にかかる問題」です。どちらも遺言による対策には限界がありますが、家族信託では次のように解決できます。

【相続対策1】遺留分問題

相続による次期社長の取得分は、自社株が含まれることから高額化します。そのため、共同相続人に最低限保障される取得分(=遺留分)が侵害されているとして、次期社長に対し遺留分侵害額請求が行われる懸念があります(民法第1046条)
しかし、オーナー社長としての権限を守る上で、株式の一部を請求権者に相続させるわけにはいきません。

そこで考えられるのが、家族信託で設定できる「受益権」を利用する方法です。設定において、受益権を遺留分権者に与えれば、配当金をもって相続分とすることが可能になるのです。

【相続対策2】二次相続対策

創業者一族で事業を守る会社では、経営スキルの円滑な伝達を目的として、父・子・孫……とのように後継ぎの家系を固定する慣習があります。
ただ、次期社長(上記例では子)が亡くなった時に3代目社長(上記例では孫)に株式を承継させるプランは、遺言しても効力が生じず実現できません。そのため、次期社長が亡くなった時に共同相続人へ株式が分散してしまい、継承してきた経営スキルが活かされなくなる恐れがあります。

こうした二次相続を巡る問題についても、家族信託なら株式の承継先を自在にコントロールできます。「次期社長が死亡した時に信託財産(=自社株)を3代目社長に帰属させる」との内容で組成し、経営スキルと共に事業を受け継ぐ家系を固定できるのです。

事業承継を目的とする家族信託の組成モデル

それでは、認知症と診断される可能性を意識した事業承継において、家族信託は具体的にどう活用されるのでしょうか。イメージの助けとなるよう、以下で信託組成のモデルを3つ将来します。

【モデル1】税対策を兼ねて認知症に備えたい

第1に紹介するのは、後継者がほぼ確定しており、相続対策もあまり考える必要のない例です。まずは信託の設計を確認してみましょう。

【信託の設計】
  • 信託財産:自社株、事業用途の不動産
  • 委託者:先代社長(指図権あり)
  • 受託者:次期社長
  • 受益者:先代社長
  • 信託監督人:弁護士A
  • 信託の終期:当事者3人の合意or委託者が死亡した時
  • 信託終了時の財産の帰属先:次期社長

この例において、先代社長は早期の引退も視野にいれています。いつでも良い時期が見つかれば経営から手を引けるよう、合意で信託を終了させて事業承継を完了させられる設計としたのが特徴です。
時系列に沿い、下記で組成した信託がどう機能するか確かめてみましょう。

  1. 1.信託設定
    … 事実上の経営者は次期社長、指示役は先代社長
    ※この時点では課税されない
  2. 2.後継者の育成が完了した時
    … 合意で終了可
  3. 3.認知症と診断された時
    … 代表者を交代し、事実上次期社長が経営権を掌握
  4. 4.信託の終了(先代社長の死亡)
    … 信託財産の残余分(=自社株)が次期社長に帰属
    ※相続税が賦課される

【モデル2】後継者の資質を試したい

これまで触れなかったものの、先代社長が自ら受託者となる「自己信託」(信託宣言)で対策する場合もあります。その目的は、今後も先代社長の元で後継者を修行させつつ、その資質を試験することです。
具体的にどんな設計になるのか、まずは確認してみましょう。

【信託の設計】
  • 信託財産:自社株
  • 委託者:先代社長(受益者変更権あり)
  • 受託者:先代社長
  • 受益者:次期社長
  • 信託監督人:司法書士B
  • 信託の終期:受益者とBの合意or委託者が死亡した時
  • 残余分の帰属先:受益者

上記内容とした家族信託は、設定してもただちに経営権が移ることはありません。次期社長はまだ何の権限も得られませんが、受益権によって自身の収入に勤めぶりが反映されることから、意欲的にスキル習得に取り組めます。
そして、先代社長が後継者の資質に疑念を覚えた時は、あらかじめ設定した「受益者変更権」(信託法第89条)を行使し、別の候補者の育成を進められます。

  1. 1.信託設定
    … 先代社長が引き続き任に当たる
    ※受益権は次期社長にあることから「みなし贈与」となり、贈与税が賦課される
  2. 2.後継者の資質に問題が見つかった時
    … 別の次期社長候補者を受益者にする
  3. 3.認知症と診断された時
    … 合意で信託を終了し、次期社長が経営権を掌握する
  4. 4.先代社長が死亡した時
    … 信託が終了し、次期社長が経営権を掌握する
    ※信託設定から3年が経過していない場合、相続税が賦課される

補足すると、財産権=受益権を早期に移転させておくモデルは、課税面や遺留分対策の上でも有利です。
第1に、今後業績回復や事業成長が見込まれる場合、敢えて信託設定の時点で課税を発生させておくことで、株価上昇による課税価格の上昇を回避できます。第2に、贈与の時期を早めれば「相続開始前の1年間」の要件に該当せず、遺留分算定のベースから自社株を除外できる見込みが生まれます(民法第1043条)

【モデル3】遺留分対策しながら将来は孫に会社を継がせたい

最後に紹介するのは、遺留分と二次相続を重視するタイプの組成モデルです。
2人の子のうち一方だけに経営スキルを継承させ、もう一方については極力不公平のない相続を実現したいとの意図があると想定し、まずは設計を確認しましょう。

【信託の設計】
  • 委託者:先代社長(死亡or認知症発症時は次期社長が指図権者)
  • 受託者:次期社長=先代の長男、予備として3代目社長
  • 第1受益者:先代社長
  • 第2受益者:3代目社長=孫(4分の3)、先代の次男(4分の1)
  • 第3受益者:3代目社長
  • 信託監督人:弁護士A
  • 信託の終期:受託者・受益者・弁護士Aの3者が合意した時
  • 残余分の帰属先:3代目社長

本設計における第1のポイントは、経営に関与する予定のない先代の次男につき、受益権=配当金という形で遺留分を確保できる点です。第2に、3代目社長の成熟が遠い将来であることを考慮し、先代が亡くなってもただちに信託を終了させない点にも特徴があります。
他には、次期社長への事業承継をスキップし、先代から3代目へ直接承継する可能性も組み込まれている点に要注目です。

  1. 1. 信託設定
    … 事実上の経営者は次期社長、指示役は先代社長
  2. 2. 万一次期社長が任に当たれなくなった場合(死亡or体調不良)
    … 事実上の経営者は3代目社長、指示役は先代社長
  3. 3. 先代社長が認知症と診断された時
    … 次期社長が経営権を掌握
  4. 4. 先代社長が死亡した時
    … 先代の次男の遺留分を確保しつつ、3代目のために次期社長が議決権と配当金を管理
    ※ 次男が希望すれば、その受益権を次期社長や3代目社長が買い取ることも可
  5. 5. 合意が形成された時
    … 信託は終了し、3代目社長が経営権を掌握

【注意】家族信託は事業承継税制との併用ができない

事業承継の手段として家族信託には、無視できないデメリットが1つあります。
それは、納税猶予および免除を認める「事業承継税制」の併用ができないことです。本税制は、自社株の贈与または相続した場合しか利用できません。

事業承継税制とは

ここで言う事業承継税制とは、未上場会社の株式を後継者が譲り受けた場合に、その株式につき賦課される贈与税(または相続税)の納付を猶予する制度です。納税猶予には決まった期限がなく、会社および後継者が要件を満たす限り継続されます。そして、贈与税なら先代経営者の死亡時、相続税なら後継者の死亡時に、それぞれ課税免除となります。
下記で一覧化したのは、本税制の基本的な適用要件です。

事業承継税制の適用要件
  • 先代・後継者共に会社の代表権を有している(有していた)
  • 先代・後継者共に総議決権数の50%超を有している(有していた)
  • 後継者の役員就任が贈与or相続の前だった
  • 資産管理会社等に該当しない
  • 承継後5年間は雇用を維持する(平均8割)
  • 利子税の額に見合う担保を供与できる

※ 贈与税についての申請は、就任から3年以上経過が条件

事業承継税制について最近注目されるのは、平成30年度税制改正で選択できるようになった「特例措置」です。猶予可能額の上限が撤廃され、事業継続が困難になった場合も課税免除になる等、一般措置に比べて優遇されています。
ただし、紹介した基本的な適用要件(一般措置分)に加え、以下2点も満たさなくてはなりません。

特例措置を受ける場合に追加される要件
  • 申告期限までに都道府県知事の認定を得ている
  • 猶予期間中、3年ごとに継続届出書を提出できる(※)

※ 提出できなかった時点で納税猶予は終了し、課税額+利子分を納付する必要があります。

事業承継税制と家族信託の比較

「事業承継税制を利用した株式の生前贈与or相続」と「家族信託」、どちらで親族内承継をすべきか悩ましいところです。いま一度、簡単にそれぞれの特徴を比較してみましょう。

【表】事業承継の方法比較
比較項目家族信託事業承継税制
(自社株の生前贈与or相続)
利用できる条件ほとんどない厳しい(継続的に要件を満たす必要あり)
認知症による資産凍結対策できる生前贈与であれば可
遺留分対策できる資産状況による
二次相続対策できる原則できない
課税面の利点なし納税猶予+免除
相続時精算課税制度適用できる適用できる

基本的な方法ごとの特徴を整理すれば、家族信託は「将来への備え重視型」、事業承継税制を利用する手法は「節税重視型」と言えます。
ただ、メリット・デメリットの比較は個別事例で行うべきです。例えば、「家族信託を選ぶと高額課税される」とは言い切れません。会社の状況と具体的な対策によりますが、事業承継税制なしでも課税額をごく低く抑えられる可能性も考えられます。

【家族信託が適しているケース】
  • 後継者教育にまだ時間がかかる
  • 相続トラブル対策が必要
  • 対策すれば、短期間かつ効率よく自社株の評価を下げられる
  • 雇用維持等の要件を先々で満たせなくなる可能性がある
【事業承継税制の利用が適しているケース】
  • 後継者教育は終わっている
  • 相続トラブルの懸念はない
  • 対策しても、自社株の評価は思うように下がらない
  • 業績アップの見込みがあり、雇用維持等の要件は満たし続けられる

まとめ

未上場企業の多くは、オーナー社長の高齢化に伴って、社長個人の資産ごと事業まで凍結されてしまうリスクを負ってしまいます。そこで、まだ元気なうちに後継者に議決権を持たせ、いざという時にすぐ経営権を掌握させる対策が欠かせません。
具体的な方法は、親族内承継なら「家族信託」がベストです。あらためて利点を整理すると、以下のようになります。

  • 議決権が社長の個人資産から分離することで、円滑な事業承継が可能になる
  • 経営権を完全に譲り渡すわけではなく、体力が続く限り後継者を監督できる
  • 遺留分問題や二次相続等、事業承継に必要な相続対策もセットでできる

個別具体的な家族信託の活用方法は、事業と相続人の両方の状況を鑑みて判断しなければなりません。本記事では基本的に「自社株」のみを問題としましたが、土地建物といった事業用資産についても要検討です。
また、家族信託の専門性は士業の間でもバラつきがあります。相談の際は、経営者のニーズに応えられる専門家を見極めなくてはなりません。悩みの内容に応じて専門家に繋いでもらえる窓口を最初にあたると、自分で相談先を選ぶ手間が省けます。

遠藤 秋乃

遠藤 秋乃(司法書士、行政書士)

大学卒業後、メガバンクの融資部門での勤務2年を経て不動産会社へ転職。転職後、2015年~2016年にかけて、司法書士試験・行政書士試験に合格。知識を活かして相続準備に悩む顧客の相談に200件以上対応し、2017年に退社後フリーライターへ転身。

『このコラムの内容は掲載日時点の情報に基づいています。最新の統計や法令等が反映されていない場合がありますのでご注意ください。個別具体的な法律や税務等に関する相談は、必ず自身の責任において各専門家に行ってください。』

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