2022年11月14日

近年の相続法改正を総チェック!

近年の相続法改正を総チェック!

近年、相続に関する法律の様々な改正が行われました。相続は多額の財産の移転を伴うことが多い重要な手続きとなりますので、これらの法改正は非常に重要になります。本コラムでは近年の相続法改正について来年(2023年)施行される最新の法改正も交えて解説していきます。

※ 本コラムは2022年8月末現在の情報に基づいています。

※ 「相続法」という法律はありません。相続に関連する法律の総称として一般的に相続法と呼ばれています。

配偶者居住権の創設

改正前

相続財産の中でも不動産、とりわけ自宅は資産価値の比重が大きくなることが多いです。残された配偶者が自宅を相続した場合、預貯金やその他の財産の取得分が減ることがあります。それだけならまだしも、自宅を売却しなければ公平な相続をすることができず、配偶者が住み慣れた家を手放さなければならないといった事態も起こり得るため、残された配偶者における老後の生活資金の確保や居住権の保護は大きな課題となっていました。

改正後

そこで配偶者居住権が創設されました。配偶者居住権を簡単にいえば「残された配偶者が住み慣れた自宅に、自宅の所有権を有していなくても賃料等の負担なく住み続けることができる権利」です。配偶者居住権によって自宅に住む権利を確保しつつ、今後の生活に必要な金銭財産も相続するといった柔軟な遺産分割が可能となります。
また、配偶者居住権は遺産分割で設定するか被相続人から遺贈してもらうことが成立要件となります。それとは別に相続が発生した段階で発生する配偶者短期居住権という権利も創設されました。

配偶者居住権の詳細はこちら

自筆証書遺言の簡易化と保管制度

改正前

遺言の一種である自筆証書遺言は紙とペンがあれば作成できるという手軽さはありますが、遺言書全文を自筆する必要があり、代筆やワープロの使用は認められないなど遺言者にとっては大きな負担となるばかりか、書き方を間違えて遺言書が無効になってしまうなどのリスクもありました。また、有効な遺言書を作成したとしても適切に保管しなければ紛失や盗難、誤って破棄してしまうというリスクがありました。さらに、相続が発生した後に遺言書を見つけた相続人によって遺言書を隠匿、改ざんされる、反対に遺言書を見つけてもらえずに被相続人の意思が伝わらないといったリスクもありました。

改正後

まず、遺言書の作成においては要件が緩和され、財産目録の記載はワープロの使用が認められるようになりました。他にも不動産の場合には登記事項証明書を添付する、預貯金の場合には通帳口座のコピーを添付する方法も認められました。

保管に関しては「自筆証書遺言保管制度」の創設によって、裁判所に遺言書を保管してもらえるようになりました。この制度のメリットをまとめると以下の通りとなります。

  • 遺言書の紛失や盗難はもちろん、相続人等による隠匿や改ざんのリスクを防ぐことができる
  • 自筆証書遺言書では原則必要である家庭裁判所による検認手続きが不要になる
  • 遺言者や相続人はいつでも裁判所に遺言書の閲覧を請求することが可能
  • 遺言者に相続が発生した際には、遺言者が指定した者に対して、裁判所が遺言書を保管している旨を通知するため、遺言書の存在を確実に相続人等に伝えることができる(この通知は遺言者が希望した場合にのみ行われます)

この制度を利用するためには遺言者自らが裁判所に出向いて手続きを行う必要があり、代理人や郵送による手続きは不可となっています。また、手続きには下記の手数料が必要となります。

手続き 手数料
遺言書の保管の申請 申請1件(遺言書1通)につき3900円
遺言書の閲覧の請求(モニターによる) 1回につき1400円
遺言書の閲覧の請求(原本) 1回につき1700円
遺言書情報証明書の交付請求 1通につき1400円
遺言書保管事実証明書の交付請求 1通につき800円
申請書等・撤回書等の閲覧の請求 申請書等1件又は撤回書等1件につき1700円

参照:法務省HP『自筆証書遺言保管制度』 https://www.moj.go.jp/MINJI/09.html

遺留分制度の見直し

改正前

遺留分とは、相続人が最低限相続できる財産の割合のことです
改正前、遺留分は「遺留分減殺請求」によって行使されていました。そしてこの行使によって行われるのは「相続財産の返還」でした。例えば、子供2人が相続人となっている相続において、遺言によって評価額が3000万円の不動産は長男のみが相続するとされていたとします。この時、次男が遺留分減殺請求を行うと、長男は侵害している遺留分の持分を次男に返還しなければなりませんでした。具体的には相続した不動産のうち、次男の遺留分である1/4の持分を次男の所有とする必要がありました。このように遺留分減殺請求では半ば強制的に不動産が共有状態となってしまいます。そもそも、相続人同士が納得しあって遺産分割を行ったのなら、遺留分は問題にはなりません。遺留分減殺請求によって共有者となった相続人同士は不仲であることも珍しくなく、その後の不動産の管理や活用において様々な問題が生じていました。
また、未上場株式においても同様の事態が発生し、円滑な事業承継の妨げになるケースもみられていました。

改正後

そこで遺留分における権利行使は「相続財産の返還」から「金銭の支払い」となりました。不動産や株式が遺留分の対象になったとしても、それによって侵害された遺留分は金銭によって清算されることになりました。つまり、上記の場合は不動産の評価額である3000万円の1/4にあたる750万円を支払うことになります。

遺留分を請求する側にとっては処分が困難である不動産の持分よりも遺留分を現金で受け取れるというメリットがあり、請求される側にとっても単独で所有したい不動産や株式の共有化を避けられるというメリットがあります。
また、この変更に伴い「遺留分減殺請求」は「遺留分侵害額請求」という名称になりました

特別の寄与

改正前

従来より、被相続人の財産の維持や増加に特別に貢献した相続人がいた場合、他の相続人よりも相続財産を多く相続することができる「寄与分」という制度はありました。しかし、息子の配偶者などの相続人ではない親族が行った貢献に対して報酬を与える制度はありませんでした。

改正後

「特別の寄与」が創設されたため、相続人ではない親族も被相続人への貢献による報酬を相続人に請求できるようになりました。なお、この貢献については「被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした」ことと定められています。ただ単に被相続人のお世話をしたというだけでは足りないのは寄与分と同様です。

特別の寄与の詳細はこちら

預貯金の仮払い

改正前

改正以前、金融機関は口座の名義人の死亡を確認するとその口座を凍結し、遺産分割協議などが整うまで一切の引出しは認められませんでした。しかし、人が亡くなった直後には葬儀や火葬など多額の費用がかかります。相続人はそれらを自身の財産から捻出する必要があり、相続人が困窮するといったことも珍しくありませんでした。

改正後

そこで相続人に対する「預貯金の仮払い」が認められるようになりました。具体的には相続開始時の預貯金額×3分の1×当該相続人の法定相続分までなら遺産分割協議前に相続人が預貯金を引き出せるようになりました。ただし1つの金融機関について引き出せるのは150万円までという制限があります。

相続と登記の関係

改正前

相続では遺産分割協議や遺言によって法定相続分とは異なる遺産分割を行うことができます。しかし、それらの取り決めは相続人以外の第三者には把握しづらいものとなっています。
それによって以下の事例のような問題が生じていました。

次男Bは債権者Xに対する1000万円の負債を負っていますが返済の目途はたっていません。そんな矢先、次男Bの父親が亡くなり、2000万円の価値がある不動産が遺されました。
相続人は長男Aと次男Bの2人なのでそれぞれの法定相続分は1/2となっています。
そこで債権者Xは当該不動産で弁済してもらおうと考え、次男Bの法定相続分である持分について裁判所の判決により差し押さえました。(差し押さえの登記をする際に債権者Xは当該不動産について長男Aや次男Bに代位して相続登記を行うことができます)
しかし、そもそもこの不動産は遺言によって長男Aが全て相続すると定められていました。

改正前では、長男Aは遺言を根拠に差し押さえられた次男Bの持分について自分の所有であると主張することができました。債権者Xの差し押さえは全く意味のないものとなってしまうということです。

改正後

改正後は法定相続分を超える部分については相続登記を行わなければ第三者に対抗することはできないとされました。上記の事例では長男Aが相続登記をする前に債権者XがB持分について差し押さえを行えば、長男Aは不動産を単独で所有することができなくなるということです。また、遺産分割協議で不動産を長男Aの単独所有とすると決めていたにも関わらず、次男Bが第三者に自身の持分を売却してしまった場合でも、長男Aの相続登記と次男Bから第三者への持分移転登記(先に次男Bが法定相続分の通りに相続登記を行います)との対抗関係、つまりは先に登記をした方が権利を主張できることになります。
2024年(令和6年)には相続登記を義務とする改正不動産登記法も施行されます。
今後の相続登記は迅速かつ確実に行うことが重要となってくるでしょう

相続放棄後の財産管理責任【最新】

最後は2023年4月1日より適用(施行)される相続放棄後の財産管理責任について説明します。

改正前

相続放棄をしたらはじめから相続人ではなかったものとみなされますが、相続財産を一切管理しなくてもいいというわけではありません。相続放棄をした者はその放棄によって相続人となった者(後続相続人)が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならないと民法によって規定されていました。しかし、相続人が一人しかいない場合や最後に相続放棄をする相続人には後継相続人がいないため管理の義務から逃れられないことになります。また、一切面識のなかった被相続人の財産も管理する必要が出てくるなどあまりに酷なケースもありました。

改正後

そこで今回の改正では、相続放棄をした者が「相続財産を現に占有しているとき」のみ保存義務を課せられることとなります。また、保存義務の期限も「相続人又は相続財産の清算人に当該財産を引き渡すまでの間」となりました。

まとめ

これらの相続関連の法律改正は、法律の効力が発生した日(施行日)以前に発生した相続にも適用されるのかどうか、注意が必要です。
例えば、配偶者居住権は施行日以前に発生した相続には設定することはできません。
それらについてまとめたものが下図になります。

法改正 施行日 施行日以前に発生した相続への適用
配偶者居住権の創設 2020年4月1日 × 適用しない
遺留分制度の見直し 2019年7月1日 × 適用しない
特別の寄与 2019年7月1日 × 適用しない
預貯金の仮払い 2019年7月1日 〇 適用する
遺産分割と登記 2019年7月1日 × 適用されない

これらの法改正は知らなかったために損害を被ったとしても、救済措置はありません
相続の当事者となった際にはこれらの法改正をはじめとする相続法を把握しておくこと、少しでも不安なことがある場合には専門家に相談することが重要であるといえるでしょう。

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『このコラムの内容は掲載日時点の情報に基づいています。最新の統計や法令等が反映されていない場合がありますのでご注意ください。個別具体的な法律や税務等に関する相談は、必ず自身の責任において各専門家に行ってください。』

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