相続登記の義務化は2024年4月1日から!
知っておきたいポイントを徹底解説

相続登記の義務化を徹底解説!!サボったら10万円以下の過料!?

今年4月28日に「民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)」が公布されました。様々な法改正が行われますが、大きな目玉の一つに「相続登記の義務化」があります。皆様もニュースなどでご覧になったことがあるのではないでしょうか。では、この相続登記の義務化は皆様にどのような影響があるのでしょうか。

「いつから相続登記は義務になるの?」「義務と言っても相続登記をしなかったらどうなるの?」といった点も含めて、相続登記の義務化について解説してまいります。

相続登記とは

今回、義務化される「相続登記」ですが、正確には「相続を原因とする所有権移転登記」です。
不動産は、国の機関である法務局が登記記録によって管理しています。登記記録には不動産の所在地や面積などの不動産そのもの情報はもちろんのこと、その不動産の所有者(所有権者)の氏名・住所も記録されています。

その不動産の所有者が死亡すると相続が発生し、所有権が相続人に移転します。この所有権の移転を登記記録に記録し、公示することを「所有権移転登記(※)」と言います。
なお、所有権移転登記は相続人等からの登記申請が必要であり、法務局が所有権移転登記を自主的に行ってくれることはありません。

※ 相続の発生(不動産所有者の死亡)によって、所有権の移転は発生しています。所有権移転登記をすることによって、所有権が移転するわけではありません。ただし、所有権移転登記をしない限り、第三者(不動産物権変動の登記が欠けていることを主張する正当な利益を有する者)にその権利を対抗することは出来ません(民法177条)。

相続登記の義務化の目的

相続登記の義務化の目的はズバリ「所有者不明土地問題の解決」です。

所有者不明土地問題とは

所有者不明土地とは「登記記録では所有者がわからない、もしくはわかっていても連絡がつかない土地」のことであり、それによって生ずる問題を所有者不明土地問題と言います。具体的な問題としては、①管理されず放置される土地が多い、②公共事業や民間取引などの土地活用が困難になる、③固定資産税の未納が発生するなどが挙げられます。

所有者不明土地問題は想像以上に深刻です。平成28年に国土交通省が行った調査では、登記記録では所有者の所在が分からない土地が約20%もありました。(国土交通省『平成30年版土地白書』より)そして、所有者不明土地は九州の面積を超える約410万ヘクタールまで広がっているとの試算が公表されており、経済的損失は年間約1800億円にものぼるとされています(2017年6月に『所有者不明土地問題研究会』(座長:増田寛也東京大学公共政策大学院客員教授)が公表)

所有者不明土地問題と相続登記

このように深刻な所有者不明土地問題ですが、相続登記と密接な関係があります。なぜなら、所有者不明土地が発生する原因の66%が相続登記未了(※)によるものだからです(法務省『「民法等の一部を改正する法律」及び「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」の概要』より)
相続登記が未了だと登記記録上の所有者は故人のままなので、所有者の所在地がわからない「所有者不明土地」となってしまうわけです。相続登記未了を原因とする所有者不明土地の問題は、対策なしに改善することはありません。むしろ時間が経てば経つほど、不動産所有者の高齢化が進み、死亡者数が増加していくことによって、さらに深刻化していくと考えられます。

※ 残りの34%の原因は住所変更登記(所有者の住所が変わった際に行う変更の登記)の未了であり、こちらも今回の法改正で義務化されます。

相続登記の義務化の概要

そもそも、登記記録における権利部(所有権などの権利に関する項目)についての登記の申請は義務ではなく、任意によるものとされています。その結果、相続登記を申請しなくても不利益を被らないならば、申請せずにそのままにしておくケースも多々ありました(※)
そこで今回、以下のように法改正を行い、相続登記未了を原因とする所有者不明土地の問題の解決を図ったわけです。

「所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない

このように相続の開始及び所有権を取得したことを知った日から3年以内という期限が設けられて、相続登記が義務化されるに至りました。

※ 最後の登記から50年以上経過している土地の割合は大都市では約6.6%、中小都市・中山間地域に至っては約26.6%にもなっています。(2017年6月に法務省が公表)

いつから義務化されるのか

では、いつから相続登記は義務化されるのでしょうか。法律は公布(国民への周知)の後に、施行(実際に適用)されます。改正法は公布されただけですので、現段階では相続登記は義務化されていません。では、いつ施行されるかというと、2024年(令和6年)4月1日より施行されます。つまり、2024年4月1日から相続登記は義務化されるということになります。

相続登記の義務化のポイント

以上が相続登記の義務化の概要です。次に相続登記の義務化における3つの重要なポイントについて解説していきます。

サボったら10万円以下の過料

まず、最初のポイントは「相続登記をしなかったときの罰則(ペナルティ)」についてです。
今回、相続登記未了の罰則として「申請をすべき義務がある者(相続人等)が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、10万円以下の過料(※)に処する」とされました。今まではするかしないか任意であった相続登記ですが、今後はしなければならないもの、さらには怠った場合には最高で10万円の過料を科せられるものとかなり厳しくなったといえます。

※ 過料とは刑罰としての性質をもたない金銭罰のことです。刑罰としての性質をもたないので、過料を科せられても前科にはなりません。同じく「かりょう」と読む「科料」との混同には注意が必要です。科料は刑罰としての性質をもつため科せられると前科となります。

施行以前に発生した相続についても義務化

次に注意しなければならないポイントは、「施行前に相続が発生した不動産においても所有権移転登記(相続登記)が義務となる」という点です。法律は基本的には不遡及(施行前に遡って適用されない)となっています。例えば、刑法が改正され新しい犯罪が規定されたとします。この場合、施行前に該当する行為をしても逮捕される・処罰されるといったことはありません(施行後に施行前の行為が発覚した場合も同様です)
しかし、今回の「相続登記の義務化」では遡及効(遡って有効になる効果)を認め、施行前に相続が発生した不動産においても所有権移転登記(相続登記)が義務とされています。そうしなければ、施行前に発生した相続、すなわち現在発生している相続登記未了を原因とする所有者不明土地の問題の解決にならないためです。
なお、施行前に発生していた相続については施行日である2024年4月1日から3年以内の所有権移転登記(相続登記)が義務となり、正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、10万円以下の過料の対象となります。

登記所による住民基本台帳ネットワークシステムの利用

今まで法務局の登記官が不動産所有者の死亡の情報を得る手段はありませんでした。しかし、今回の法改正で登記所住民基本台帳ネットワークシステムから所有権の登記名義人の死亡情報を取得するための仕組みが設けられました。つまり、登記官が住民基本台帳ネットワークシステムを定期的にチェックし、登記名義人の死亡を把握するようになったということです。また、得た情報を元に登記官が職権で登記名義人死亡の旨を示す符号を表示することが出来るようになりました。

相続登記を申請するためには

このように義務化される相続登記。では、相続登記を申請するためには何をする必要があるのでしょうか。この項では相続登記の手順(遺言がなかった場合)について解説していきます。

相続人の確定と相続する不動産の調査

相続が開始したらまず「誰が」「どの不動産を」相続する権利があるのかを確定させる必要があります。

まず、「誰が相続人になるか」については民法第900条に定められています(配偶者、子供、両親・祖父母などの直系尊属、兄弟姉妹 ※)。
そして、亡くなった不動産の所有者(被相続人)にこれらの者が存ずるか調査するためには、被相続人の「出生から死亡まで」の戸籍謄本等が全て必要となります。被相続人の死亡から出生までの戸籍謄本を全て遡って調べたうえで、相続人を確定させていきます。

次に「どの不動産を相続するか」についてです。被相続人がどのような不動産を所有していたかは、登記識別情報(登記済証)や固定資産税の納税通知書などをもとに調査することになります。また、市区町村の役所で「名寄帳(被相続人が所有している不動産の一覧表)」を取得することにより調べることも出来ます。
その後、法務局に当該不動産の登記事項証明書を取得し、登記記録上においても被相続人が所有者であることを確認します。

※ 被相続人の死亡前に子や兄弟姉妹が亡くなっていた場合には孫や甥姪が相続人となります(代襲相続)。
被相続人の死亡後に立て続けに(「遺産分割協議」や「相続登記」を行わないうちに)相続人が亡くなった場合は「相続人の相続人」が被相続人の相続人となります(数次相続)。例えば、被相続人の子が亡くなった場合は「子の配偶者」や「孫」が相続人となります。

実際の相続人の決定

相続人が確定し、相続する不動産が明確になったら、その不動産を実際に相続する者を決めていきます。遺言がない場合の相続分は民法第900条に規定されています(法定相続分)が、必ずしも法定相続分の通りに分配する必要はなく、相続人全員の合意により法定相続分とは異なる割合にすることも可能です。この相続人全員の話し合いを「遺産分割協議」と言います。遺産分割協議により相続する者を決定した場合は、遺産分割協議の結果を記録した「遺産分割協議書」を作成します。なお、遺産分割協議書には相続人全員の署名と実印の押印が必要です。

所有権移転登記(相続登記)

ここまで書類が揃ったら、所有権移転登記の申請をします。もちろん、自分で申請することも出来ますが、司法書士に依頼することがほとんどかと思います。また、前述の戸籍の収集や登記事項証明書の取得も司法書士に委任することが可能です。さらに遺産分割協議書も相続人の意向を伝えれば、あとは署名押印するだけの状態で作成してもらうことも出来ます(司法書士への報酬・実費はかかります)

相続登記の費用

相続登記の費用は、司法書士への報酬と実費(自分で相続登記申請をしても掛かる費用)に分けられます。
まず、司法書士への報酬ですが不動産の所在地や評価額、司法書士に相続登記のどの段階から依頼するのかによって変動はありますが、全体的な平均は6万~8万となっています(日本司法書士会連合会『報酬アンケート結果(2018年1月実施)』より)
次に実費としては登録免許税があります。登録免許税は登記を申請する際に納付する必要のある税金です。相続を原因とする所有権移転の場合、登録免許税の額は不動産の評価額の0.4%となります。また、この他に戸籍登記事項証明書や住民票、登記事項証明書などを取得する費用も必要となります。
つまり、例えば評価額3000万円の不動産の相続登記には司法書士への報酬として約7万円、登録免許税として12万円の合計約19万円が掛かることとなります(※)

※ あくまでも参考金額です。実際の金額は依頼する司法書士等によって変わります。

相続登記の手続きの簡便化

このように手間や費用のかかる相続登記ですが、義務化に伴って手続きを簡便にする措置もとられました。

相続人申告登記制度(仮称)

新たに創設される相続人申告登記制度とは、法務局の登記官に所有権の登記名義人が亡くなったことと、自身が相続人であることを申告するという簡単な手続き(※)により、相続登記を申請する義務を履行したものとみなされるという制度のことです。相続登記を申請する義務を履行したものとみなされるため、過料の対象からも外されます。ちなみに申告後、登記官は登記名義人死亡の旨と申出した者の氏名住所を登記に付記しますが、これは公示の役割しかなく、所有権の移転を示すものでありません。

また、この制度は遺産分割に争いなどがあり、3年以内の所有権移転登記が困難である場合に応急処置的に申告することなども想定されています。その場合、後に申告人が遺産の分割によって所有権を取得したときは、やはり当該遺産の分割の日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請する義務が生ずる点には注意が必要です。

※ 申告登記の申出をする者は当該登記名義人の法定相続人であることを証する情報を提供しなければならないものとされています。ただ、これは単に申出人が法定相続人の一人であることが分かる範囲での戸籍謄本を提供すればよく、例えば、配偶者については現在の戸籍謄本のみ、子については被相続人である親の氏名が記載されている子の現在の戸籍謄本のみで足りることが想定されています。

所有不動産記録証明制度(仮称)

前述のように相続登記では相続する不動産を調べる必要があります。しかし、登記識別情報(登記済証)や固定資産税の課税通知書が見当たらない場合、調査は困難なものとなります。自宅のように明らかに所有していると思われるものであればいいのですが、中には相続人が把握していなかった不動産を所有していたケースもあり、相続登記漏れの原因となっていました。

そこで新たに創設される所有不動産記録証明制度では、相続人が法務局から、被相続人が名義人となっている不動産の一覧の証明書を取得できるようになります。これにより、登記識別情報(登記済証)や固定資産税の納税通知書が見当たらなくても所有不動産を調べることや相続人が把握していなかった被相続人所有の不動産を知ることが出来ると考えられます。
なお、この証明書は自己所有不動産の一般的な確認方法としての利用も想定されています。

相続登記費用(登録免許税)

手続きの面以外にも、相続登記の登録免許税について令和4年度の税制改正で必要な措置が検討されるものとなっています(自由民主党・公明党『令和3年税制改正大綱』より)

まとめ

相続登記は時間が経てば経つほど、新たな相続が発生し相続人が増える、相続登記に重要な書類を紛失するなどにより手続きが煩雑になっていくおそれがあります。実際に相続登記が義務となるのはまだ少し先の話になりますが、現在相続登記が未了になっている方も、司法書士などの法律専門家に相談するなど、早めの行動をお勧めします。

ただ、相続登記が完了すればすべて解決というわけではありません。民法第717条には土地の工作物等の占有者及び所有者の責任が規定されています。例えば、屋根の瓦がはがれかけているのを放置したために、強風で飛ばされた瓦が通行人に当たって怪我をさせてしまった場合、所有者である相続人が損害賠償責任を負うことがあります。
また、被相続人の死亡により不動産が空き家になった場合、空き家対策特別措置法により行政(市区町村)から空き家の管理について助言や指導勧告をされることがあり、それを無視し続けた場合には50万円以下の過料を科す規定も設けられています。

そうは言っても、実家などの不動産を相続したものの遠方に住んでおり、管理のために頻繁に訪問するのは難しいということもあるでしょう。司法書士は登記の専門家ではありますが、不動産管理にまで精通している方は多くないと考えられます。不動産の管理においては、不動産管理を取り扱う不動産会社への相談をお勧めします。
今回の義務化は相続登記について考える良い機会にもなると思います。皆様もぜひ相続登記のこと、そして相続登記後に不動産をどうするかについて考えてみてはいかがでしょうか。

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『このコラムの内容は掲載日時点の情報に基づいています。最新の統計や法令等が反映されていない場合がありますのでご注意ください。個別具体的な法律や税務等に関する相談は、必ず自身の責任において各専門家に行ってください。』

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