2024年7月16日

生命保険は相続税の節税対策になる?
登場人物で立場が変わるケースを紹介

生命保険は相続税の節税対策になる?<br>登場人物で立場が変わるケースを紹介

自分や家族に何かあった時のために、生命保険に加入されている方も多いでしょう。
家族が亡くなったことで受け取る保険金は、税金がかかる場合があります。
死亡保険金は、残された家族の生活を守ってくれる効果がありますが、保険金の額や受取人との関係によって相続税対策になることもあります。
今回は、死亡保険金にかかる相続税について登場人物で変わってくるケースをいくつかあげて紹介します。
死亡保険金は節税対策になりますが、注意すべき点を抑えておかないと余計な税金を払ってしまう可能性もあります。
この記事では、節税対策で気をつけるべき点についても解説していきます。
これから生命保険に加入しようとしている方にも参考になると思いますので、ぜひ最後までご覧ください。

1.相続税における保険金の控除額と内容について

前述で保険金を受け取ることで、税金がかかると解説しましたが、受け取った金額の全てに税金がかかるわけではありません。
生命保険金の目的は、残された家族への生活保障です。
そのため、相続税に非課税枠が設けられており、ある程度の税金が控除されます。
相続税の非課税枠は次の計算式で算出されます。

生命保険の非課税枠=500万円×法定相続人の数

法定相続人とは、民法で定められた相続人のことで、相続放棄した人も含まれます。
例えば、夫が死亡し、妻と子供2人が相続人の場合の計算例を見てみましょう。

<例>

  • 死亡保険金の受取額:2,500万円
  • その他相続財産:1,000万円
  • 合計:3,500万円
  • 生命保険の非課税枠:500万円×3名(妻・子供2人)=1,500万円

法定相続人である妻が2,500万円の死亡保険金を受け取った場合、2,500万円から1,500万円が非課税として控除されます。
死亡保険金の非課税分1000万とその他の財産の1000万を合算し、結果として、2,000万円が課税対象となります。

2.保険金にかかる税金は必ずしも相続税ではない

生命保険の保険金にかかる税金は必ずしも相続税とは限りません。
保険金は、受け取る額によって税金がかかることがありますが、契約者や受取人の関係性によって税金の種類が変わります。
簡単に生命保険にかかる税金の種類を表にまとめてみました。

立場によって変わる税金パターン表
被保険者 契約者(保険料負担人) 受取人 かかる税金
(被相続人) (被相続人) (配偶者) 相続税
(被相続人) (配偶者) (配偶者) 所得税
(被相続人) (配偶者) 贈与税

相続税がかかるパターン

相続税がかかるパターンは、被保険者と契約者が同一人物の場合になります。
税金パターン表で解説すると、保険の受取人は妻となり、受取った保険金から非課税を控除した金額に相続税がかかってきます。

所得税がかかるパターン

被保険者と契約者が異なり、受取人が契約者と同一人物の場合、税金の種類は所得税になります。
所得税は、保険金の受け取り方によって税金の計算方法が変わりますので注意しましょう。
死亡保険金を一括で受け取る場合は「一時所得」、年金のように毎年受け取る場合は「雑所得」扱いとなり、それぞれで計算方法が異なります。

贈与税がかかるパターン

被保険者と契約者が異なり、尚且つ受取人も違う人の場合は、贈与税の扱いになります。
表のパターンで解説すると、契約者が妻で子供が受取人の場合です。
子供が受け取るから相続税ではないかと考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、保険の契約者が妻であり、妻から子へ保険金を受け取る扱いになるので、贈与されたことになるのです。
また、贈与税にも基礎控除として110万円の非課税があります。

このように、死亡保険金は、契約者や受取人の立場が変わることによって、税金が変わってくるので気をつけましょう。

3.非課税枠を超えた分の税金の計算方法と複数人に受取人がいた場合の取り扱われ方

死亡保険金を受け取った場合の相続税は、非課税枠によって税金が抑えられますが、超えた分は税金がかかってきます。
次は、非課税枠を超えた分の税金の計算方法をご紹介します。
また、複数人に受取人がいた場合、どのような扱いになるのかなど事例をあげて解説していきますので、ぜひ参考にしてください。

保険金を受け取った財産の取り扱いは「みなし相続財産」

死亡保険金を受け取った財産は「みなし相続財産」の扱いになります。
「みなし相続財産」とは、相続人が元々持っていた相続財産ではなく、被相続人が亡くなったことをきっかけに相続人が受け取った財産をいい、死亡保険金や死亡退職金などがこれにあたります。
このため、非課税枠を超えた死亡保険金などは、相続税がかかることになるのです。

非課税枠を超えた分の税金の計算方法

次は、受け取った保険金が非課税枠を超えた場合の税金の計算方法をご紹介します。
最初に解説した通り、相続税には一定額の非課税枠が設けられています。
非課税枠を超えた金額に相続税がかかってきますが、どのような計算がなされるのでしょうか。
複数人の受取人がいた場合、それぞれの保険金に非課税枠が適用されるのですが、受け取る金額の比率で配分されます。
ここでは、保険金の受取人と具体的な金額を例に出して解説します。

<法定相続人>

配偶者・長男・次男

<それぞれが受け取った死亡保険金>

  • 配偶者:1,500万円
  • 長男:600万円
  • 次男:400万円
  • 合計保険金:2,500万円

<非課税限度額>

500万円×3人=1,500万円

<それぞれにかかる非課税額の計算>

  • それぞれが受け取る死亡保険金に非課税限度額を分配します。
  • 配偶者:1,500万円×1,500万円/2,500万円=900万円
  • 長男:1,500万円×600万円/2,500万円=360万円
  • 次男:1,500万円×400万円/2,500万円=240万円

<死亡保険金の各課税価格>

  • 配偶者:1,500万円ー900万円=600万円
  • 長男:600万円ー360万円=240万円
  • 次男:400万円ー240万円=160万円

このように、保険金を複数人が受け取った場合の非課税枠は非課税限度額を比率計算して、課税価格を算出します。

4.注意点

死亡保険金の受取が相続税の対象になる場合、非課税枠を利用して税金を抑えることができるので、節税対策になると考える方もいらっしゃるでしょう。
しかし、相続税には様々なルールがあるため、注意すべき点があります。
相続税対策をしたつもりが、予定よりも税金を払い過ぎる結果になってしまっては本末転倒です。
ここからは、生命保険の相続税対策について注意点について解説します。
主な注意点は次の4つです。

  • 孫への相続税は2割加算される
  • 相続放棄の場合の取扱われ方とその理由
  • 相続税の申告と納税期間
  • 保険会社選びの注意点

孫への相続税は2割加算

死亡保険金の受取は孫にも残したいと考える人もいらっしゃるでしょう。
しかし、保険金の受取人を孫にしてしまうと相続税額が増えてしまいます。
例えば、以下の方は相続税額の2割加算の対象になります。

  • 被相続人から相続または遺贈により財産を取得した人で、被相続人の配偶者、父母、子ではない人(例示:被相続人の兄弟姉妹や、おい、めいとして相続人となった人)
  • 被相続人の養子として相続人となった人で、その被相続人の孫でもある人のうち、代襲相続人にはなっていない人

上記に該当する場合は、相続税額の2割加算の対象となりますので注意が必要ですので、受取人との関係をよく確認された上で手続きをすすめるのが良いでしょう。

相続放棄の場合の取扱われ方と理由

生命保険金は相続財産ではなく「みなし相続財産」となるため、相続放棄をした人でも保険金を受け取ることができます。
財産放棄をしていても保険金が受け取れると聞いて喜ぶ人もいらっしゃるかもしれません。
しかし、財産放棄をして生命保険金を受けとった場合、非課税枠を使うことができません。
非課税枠の算出は、法定相続人の数で計算されるので、相続放棄した人も人数計算に入ります。
しかし、肝心な控除の計算では、相続放棄した人は、非課税枠を使っての控除ができないため、相続税が増えてしまうのです。
相続放棄には、思わぬ落とし穴もあるので、慎重におこなうのが良いでしょう。

相続税の申告と納税期間

相続が行われることで、相続税の申告を行わなければならない場合があります。
相続税の申告が必要な場合は、遺産にかかる基礎控除を超えてしまった場合です。
また、相続税の申告には期限が定められており、期限内に行わないと加算税や延滞税などのペナルティが課せられます。
相続税の申告と納税期間は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内です。
この期間内に所轄の税務署に相続税の申告書を提出し、納税額を納めます。
また、納税額も早めに納めるようにしましょう。
仮に期限が過ぎてしまった場合は、なるべく早く申告書を提出するようにしてください。

保険会社によって加入できる年齢に制限がある

保険会社によっては加入できる年齢に制限があって、加入できないこともあります。
将来残された家族のために生命保険の加入を検討される方もいらっしゃるかもしれません。
保険の種類は多くある一方で、年齢や持病によっては加入できない保険もあるので、よく調べてから選ぶようにしましょう。
他にも、加入するタイミングによって、保険料が高くなるリスクを負う可能性も出てきます。
保険はあくまで、何かあった時のための保険です。
生命保険を選ぶときは、保険金のことだけでなく、本来の保険の目的を見失わず選ぶことが大切です。

5.まとめ

今回は、生命保険の死亡保険金を受け取った場合の相続税に関する情報を解説しました。
死亡保険金を受け取った場合は、必ずしも相続税に関わってくるわけでなく、保険契約者と受取人の関係性で税金の種類が変わってきます。
死亡保険金は、相続税の節税対策になる話はよく聞く話ではありますが、正しい知識と情報を理解しておかないと、税金を多く払ってしまう可能性も出てきます。
また、相続税などの税金は、税法などのルールが複雑に絡み合っていることもあり、専門家でないとわかりにくい部分もあります。
死亡保険金を使って相続税の節税対策をしたい人は、契約している保険会社や税理士に相談することがおすすめです。
特に、相続税は、税法や特例制度などが複雑になっているため、わかりにくい点も多いですし、法律も日々改正が行われるため、新しい制度に変化していきます。
そのため、専門家の知識を取り入れた方が節税対策につながりやすくなるでしょう。
どの保険を選んでいいのか、保険の受取人を誰にしておいた方が相続税対策になるかなどわからないという方は、相続税に詳しい税理士に相談するのが良いでしょう。

岩﨑 英美

岩﨑 英美

過去に経験した金融トラブルをきっかけにお金のこと、税務のことに興味を持つようになり、会計の道を志す。現役で会計事務所に勤める傍ら、知識を活かし、ライターとしても活躍中。ライター歴は6年。金融関係の記事を得意とし、読者に丁寧でわかりやすい記事を心がけている。

『このコラムの内容は掲載日時点の情報に基づいています。最新の統計や法令等が反映されていない場合がありますのでご注意ください。個別具体的な法律や税務等に関する相談は、必ず自身の責任において各専門家に行ってください。』

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