寝たきりの方の財産管理や資産承継はどうする?備えについても解説

寝たきりの方の財産管理や資産承継はどうする?備えについても解説

皆さんは「健康寿命」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。健康寿命は「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間の平均」のことなのですが、この健康寿命との平均寿命との間のギャップ(男性約8年・女性約12.5年)があり、亡くなるまでのこの数年間は「健康ではなく介助を必要とする期間」といえます。
そして、健康寿命を喪失している状態の一つに「寝たきり」があります。もし、自分や大切な家族が寝たきりになってしまったら、財産管理や資産承継はどうすればよいのでしょうか。本コラムでは寝たきりになった場合の財産管理や資産承継について解説します。

※ 参考:厚生労働省『健康寿命の令和元年値について』

寝たきりとは

寝たきりと聞くと一日中床に伏して起き上がることができず、食事や排泄のすべてに介助が必要な状態を想像される方もいるかと思います。もちろん、その状態も寝たきりになります。ただ、寝たきりは軽度なものから重度なものまでその程度は様々です。
例えば、車いすに乗って食事や排泄ができたとしても、屋内でも介助が必要で日中を主にベッドで過ごしている場合は軽度の寝たきりとされています。
他にも屋内では概ね介助を不要としているが、介助なしでは外出できない状態である準寝たきりというものもあります。

寝たきり(要介護)の原因

寝たきりをはじめとした要介護になってしまう主な原因は認知症、脳血管疾患(脳卒中等)、骨折・転倒などが挙げられます。特に認知症による要介護については2001年の時点では原因の第4位でした。それが近年、次第に増加し、2016年には長年1位だった脳血管疾患を抜いて全体の1位となりました。
また、要介護になる原因については男女によって大きな差があります。男性の場合は脳血管疾患が原因の約24.5%で第1位となっており、認知症は第2位となっています。それに対して、女性は認知症が19.9%と最も高く、脳血管疾患は10.3%にとどまっています。
このように見ると男性は突然倒れて要介護になることが多く、女性は認知症等によりだんだんと衰えていって要介護になっていくことが多いといえます。

なお、全体の原因の第4位は高齢による衰弱となっており、これといった大きな原因はなくても加齢によって要介護になってしまうこともあります

※ 参考:厚生労働省『国民生活基礎調査』

寝たきりの方の財産管理

次に寝たきりの方の財産管理について見ていきましょう。寝たきりになると介護費用など様々な費用がかかることになりますので、財産管理は大きな問題となるでしょう。

後見制度(法定後見制度)

自分自身で財産管理ができなくなった場合、後見制度が利用できるとお考えの方もいると思います。ただ、寝たきりになったからといって、必ずしも後見制度が利用できるとは限りません。後見制度はあくまでも意思能力の喪失や低下がある方のための制度です。そのため、認知症等により意思能力が低下した状態で寝たきりになった場合は後見制度を利用することは可能ですが、骨折などによって寝たきりになった、つまり意思能力の低下はみられないが体が動かせないといった場合には後見制度を利用することはできません

財産管理委任契約

財産管理委任契約とは、財産の管理や福祉サービスの利用に関する手続きなどについて、信頼できる人に自分に代わって行ってもらう、つまり他人に委ねるといった契約です。委任する者を委任者、委任されるものを受任者といいます。
財産管理制度において、受任者は委任者の指示のもと、預貯金の引出しや介護費用の支払いを行うことになります。そのため、委任者となる寝たきりの方に意思能力がない場合、受任者は有効に法律行為をおこなうことができません。また、金融機関によってはこれらの委任契約に対応していない場合があるので事前の確認は必須であるといえるでしょう。

このように見ると寝たきりの方に意思能力があるか否かによって、利用できる財産管理の方法が変わることが分かります。また、寝たきりの方に意思能力があり、財産管理委任契約を利用してきたものの、意思能力が低下してきたために法定後見制度の利用に移行したいという場合もあると思います。その際、後見人を選任するのはあくまでも家庭裁判所であるため、受任者が後見人になれるとは限らない点には注意が必要です。確実に受任者をそのまま後見人に就任させたい場合には、意思能力が十分なうちに成年後見人となる者を指名しておき、意思能力を低下したときに備えておく任意後見制度の利用を検討するべきでしょう。

資産承継(遺言)

寝たきりの状態であることは遺言を作成できるか否かの判断基準にはなりません。たとえ寝たきりであっても意思能力があれば、遺言を遺すことは可能です。なお、遺言は「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」に大別されます。

自筆証書遺言

自筆証書遺言は紙とペンがあれば作成できる手軽さはありますが、財産目録を除いた遺言の全文を遺言者が自筆しなくてはならないため、場合によっては寝たきりの方の負担が大きくなります。また、書き方を間違えてしまったら遺言自体が無効になってしまうおそれもあります。なお、遺言者が手書きすることが必須であり口述筆記などの代筆は認められていません。また、自筆証書遺言の場合は作成後にも適切に保管しないと紛失などのリスクもあります。近年、裁判所に自筆証書遺言を保管してもらえる制度ができました。ただし、この制度を利用するためには遺言者本人が法務局に自筆証書遺言を持参する必要があります。代理人による申請や郵送による申請は認められていないため、寝たきりの方にとって利用は難しいといえるでしょう。

公正証書遺言

その点、公正証書遺言は本人が遺言書を自筆する必要はありません。親族や法律専門職が本人の意思を聞いたうえで作成することが可能です(もちろんパソコンなども使用できます)。また、公証役場にて公証人が遺言者本人の意思確認をするため、遺言の信頼性も保証されることになります。遺言者が公証役場まで行くことができない場合、公証人に病院や施設、自宅に出張してもらうことも可能です。さらに公正証書遺言の場合、遺言書の原本は公証役場に保管されるので紛失の心配がありません。遺言者には謄本が渡されるため、遺言の内容はいつでも確認することが可能です。また、紛失しても再発行が可能です。

公正証書遺言の欠点としては事前に公証人との打ち合わせが必要であるため作成まで時間を要する点と費用がかかる点が挙げられます。
なお、費用としては公証人に対する手数料や作成に必要な戸籍などの書類の取得費用がかかります。また、公証人の出張が必要な場合には出張費がかかることがあります。それから、公正証書遺言の作成を法律専門家に依頼する場合には専門家報酬がかかります。

家族信託について

ここまで寝たきりになった場合の財産管理や資産承継についてみてきました。最後は寝たきりになる前の備えとして、家族信託の説明をします。

家族信託とは、財産を持っている人(委託者)が、信託契約や遺言などによって、信頼できる家族(受託者)に対し不動産・現金等の財産(信託財産)を託し、一定の目的(信託目的)に沿って、特定の人(受益者)のために、受託者がその財産を管理・処分する家族間の財産管理制度です。

家族信託の仕組みについての詳細はこちら

近年、家族信託は認知症による資産凍結対策として注目されていますが、もちろん寝たきりになってしまった場合の財産管理においても有効です。また、家族信託は前述の後見制度や委任契約、遺言それぞれの機能の一部を併せ持つため、元気なうちから、寝たきりになってしまったとき(意思能力の有無を問わない)、亡くなったときまで有効に活用できる点もメリットの1つであるといえるでしょう。

【備考】寝たきりになった後でも家族信託を始めることはできるのか

確かに寝たきりの状態になっても、本人に意思能力があれば信託契約を締結し、家族信託を始めることは可能です。ただし、家族信託を行ったとしても委託者である寝たきりの方の預貯金を受託者が引き出すといったことはできません。預貯金債権は譲渡禁止債権であるため信託財産とすることができないためです。委託者の預貯金を引き出すためには別の制度(委任契約等)を利用する必要があります。このような手間を考慮しても家族信託は委託者が元気なうちから検討すべきといえるでしょう。

まとめ

以上が寝たきりの方の財産管理や資産承継についての解説でした。
前述の通り、寝たきりをはじめとする要介護となる原因の第1位は認知症です。そして、2025年には65歳以上の5人に1人が認知症になるといわれています。誰にでも認知症に、そして寝たきりになるリスクはあるといえるでしょう。
また、認知症においてはもの忘れが出てきたなど前兆がみられることも多く、事前にある程度備えることが可能です(もちろん、認知症が急激に進行することもあります)
しかし、脳血管疾患や転倒・骨折はある日突然起こり、そのまま寝たきりになってしまう可能性があります。必要以上に恐れる必要はありませんが、万が一のときの備えを元気なうちから考えておく必要はあるといえるでしょう。

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『このコラムの内容は掲載日時点の情報に基づいています。最新の統計や法令等が反映されていない場合がありますのでご注意ください。個別具体的な法律や税務等に関する相談は、必ず自身の責任において各専門家に行ってください。』

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