共有名義の不動産を相続するデメリット 将来に向けて共有状態を回避するには

共有名義の不動産を相続するデメリット 将来に向けて共有状態を回避するには

共有名義の不動産は、権利が細分化されている性質上、管理・運用の面でトラブルの温床となりがちです。一度問題が発生してしまうと、売却も利用もできず多額の赤字を出し続ける「負の遺産」になりかねません。
このような事態を防ぐには、なるべく早い段階で共有状態を解消、または回避していく必要があります。

以下では、空き家問題にも賃貸管理トラブルにも間接的に影響している「共有名義の不動産」のデメリットについて、遺産分割までにとれる具体的な対処法と共に解説します。

共有名義不動産の相続における5つの問題点

共有名義の不動産の多くは有効活用できない状態にあり、管理自体もおろそかになりがちです。最悪の場合、近隣住民から損害賠償請求される、特定空家等に指定されて固定資産税減額の特例が適用できなくなってしまうなど、多額の損失に繋がってしまいます。

上記のようなトラブルを生じさせてしまうのは、管理処分時に共有者同士の連携が必要になる性質が原因です。他の共有者と意見対立してしまう、そもそも連絡がとれない、認知症等の影響で意思疎通ができない、などの事情のせいで維持が困難になってしまうのです。
以降では、共有名義不動産に特有のデメリットを5つに分け、考えられるトラブルと合わせて解説します。

1. 建物等の利用に関するデメリット

共有不動産の第一のデメリットは、特定の共有者による単独使用が難しい点です。
共有物の使用について定める民法の規定において、共有者は「その持分に応じた使用」しかできないとされていることが理由です。

よくあるのは、共有者の一部が居住あるいは不動産経営に乗り出そうとして、他の共有者が反対し挫折してしまうケースです。

2. 建物等の管理で発生するデメリット

第二のデメリットとしても、増改築などの変更行為には「共有者全員の同意」(民法第251条)、賃貸借契約の締結・解除といった管理行為には「持分価格の過半数の同意」(第252条)がそれぞれ必要になる点が指摘できます。
なお、共有者が単独で出来る行為もありますが、せいぜい「草刈り」や「屋根の修繕」などの現状維持に繋がること(=保存行為)に留まります。

この点に関してよく起こるのは、やはり収益不動産の経営上のトラブルです。
相続で共有者になった人同士の連携が取れないために、入居者を募ったり、賃料滞納等のトラブルを起こす賃借人との契約解除をしたりすることが出来ず、頭を抱えてしまうことがあります。

3. 売却しようとする時のデメリット

同じく、不動産を売却する時も「共有者全員の同意」が必要です。
持分を譲渡するだけなら単独でも可能ですが、今度は買い手や売却価格が問題になります。共有者同士の取引なら見込みは高そうですが、資金があり合意できる状況とは限りません。
また、第三者への持分売却も困難です。まず、共有不動産特有の問題から、妥当な価額で買い取ってくれる人が見つかる保証はないのが実情です。見つかったとしても、親族関係にある共有者の中に見ず知らずの人物が入ることで、以降トラブルに発展してしまうかもしれません。

この点に関しては「建物利用はできない、かといって売却で離脱することもできない」とのように、まったく身動きの取れない状態になってしまう恐れがあります。

4. 固定資産税の納付時に発生するデメリット

共有不動産の第四のデメリットとして、毎年賦課される「固定資産税」の支払いに関する問題が挙げられます。
前提として、固定資産税は共有者全体で連帯して納付しなければなりません(地方税法第10条の2第2項)。実際の納付対応では、まず代表者1人に納税通知書が届き、ひとまずは納税分を立て替えておくなどして、他の共有者から各持分相当の課税額を集金することになります。

よくあるのは、共有者が集金に応じてくれない(何らかの事情で応じられない)ケースです。結果、代表者ひとりで納税負担せざるを得なくなり、経済的に苦しくなってしまいます。

5.今回以降の相続で起こる問題

特に注意したいのは、時間経過とともに共有者の数が増えていく問題です。共有者が亡くなってその子たちへ、その子たちも亡くなって孫世代へ……とのように、相続が開始される度にねずみ算式で権利者が増えてしまうのです。

上記のように権利が細分化されていくうち、特定の共有者が単独で出来る範囲はどんどん狭まります。また、共有者間の交流も血縁関係が遠のくにつれて薄らぎ、使用・管理・売却等に必要な連携も取りづらくなってしまいます。

このままだと、いずれ相続登記のための遺産分割協議すら開けなくなり、古い登記名義人のままで放置されるでしょう。やっと「登記名義を更新して活用しよう」と意欲をみせてくれる子孫が現れても、数次登記と呼ばれる複雑な手続きが必要になり、大いに負担をかけてしまいます。

不動産相続で共有名義を回避するための生前対策

それでは、不動産共有によるデメリットを次の世代に引き継がないようにするには、どうすればいいのでしょうか。結論として、平等に相続できるよう配慮しつつ、現所有者の世代で共有名義の予防(もしくは解消)をしておくのが確実です。その方法としては、以下の3点が挙げられます。

1. 遺言による共有名義対策

まず考えられる共有名義の予防策は、遺言書で以下いずれかの分割方法を指定しておく方法です。ただし、どちらの分割方法にも指摘するような課題があり、必ずしも生前のうちに解決できるとは限りません。

方法1:代償分割
不動産を単独相続させつつ、他の相続人に「代償金」を支払わせることで公平性を保つ方法です。この方法では、代償金を生前のうちに確保できるか、あるいは不動産を相続する人に十分な資金があるかどうかが課題です。
方法2:換価分割
不動産を売却し、その代金を相続人全員で分割してもらうことで公平性を保つ方法です。売却手続きするにあたっては、相続人のうち誰が主導するのか、また相続開始のその時になってスムーズな売却手続きが出来るのかどうかが課題になります。
遺言による対策のデメリットは、相続開始の時に不本意な選択を強制されてしまう可能性がある点です。高利回りが期待できる物件なのに売却しなければならない、もしくは将来性のない物件なのにすぐ売却できない……といった状況になるのです。そこで、次の対策が考えられます。

2. 家族信託による共有名義対策

家族信託とは、資産を指定して信頼できる親族に権限を与え、別に指定した受益者のために管理処分を行ってもらう契約です。権限が与えられた親族は「受託者」と呼ばれ、信託の終了まで単独で管理等を行えます。また、信託終了時の残余財産を誰に与えるかは、契約時の話し合いで自由に決められます。
上記の仕組みを活用すれば、物件が生み出す価値は共有、しかし管理処分権を単独、そしていつでも売却するなどして共有を解消できるとのように、長期的で選択肢のあるプランを立てられます。下記のイメージを使い、実際にどのように共有名義対策ができるのか見てみましょう。

【例】家族信託契約のイメージ
  • 信託財産:賃貸アパートA
  • 委託者:(Aの所有者)
  • 受託者:長男
  • 第一受益者:
  • 第二受益者:長男・次男・三男(受益権割合は3分の1ずつ)
  • 信託期間:受益者と受託者が終了に合意するまで
  • 信託終了時の財産の帰属先:受益者

上記の内容で家族信託を組成すると、賃料収入は3兄弟で公平に分け合いつつも、Aの管理処分権はAに集約できます。さらに、好きなタイミングで共有状態を完全に解消するための”出口”が2つ用意されています。
出口のひとつは、賃貸経営を断念し、信託終了による換価分割の手続きに進むものです。もうひとつは、子に賃貸経営を継がせるべく信託の状態を解消したいと考えた長男が、弟たちから相当の金額で受益権を買い取り、信託を合意解約して所有権を単独で取得するものです。
上記どちらの出口を選んでも、条件は公平です。

3.法人化による共有名義対策

最後に考えられるのが、不動産所有の主体を法人化しておく方法です。あらかじめ法人化しておけば、管理処分に関する権限は集約しながら、収益は将来の相続人に役員報酬などとして分散できます。

また、設立済の法人に不動産を買い取らせる場合は、ここでも家族信託が役立ちます。
具体的には、不動産の「所有権」ではなく「信託受益権」として権利譲渡するなどの手法で、流通税を節約できます。

今の世代の共有名義を解消する方法

では、今の所有者の代で既に共有名義となっている不動産は、どうすれば将来のリスクをなくせるのでしょうか。この場合、考えられる手段はいくつかあります。

【不動産の共有を解消する方法】
  1. 1)他の共有者から持分を買い取る
  2. 2)他の共有者に持分を買い取ってもらう
  3. 3)共有者全員で第三者に持分を売却する
  4. 4)土地分筆や共有物分割請求などで持分を単独名義化する
  5. 5)家族信託を活用し、将来的に自分の持分が他の共有者に移転するようにしておく

1)~4)までの方法は、どうしても他の共有者の同意が必要です。他の共有者が子・孫などの信頼できる人であり、どちらかと言えば自身のリスク(認知症を発症して共有物の管理や変更に同意できなくなる等)が心配な場合、5)が検討できるでしょう。

また、以下のケースでは、残りの共有者が対象の持分を吸収できます。

【持分吸収できるケース】
  • 共有者が持分を放棄した時(民法第255条)
  • 死亡した共有者に相続人がいない時(同上)
  • 共有者が管理費用を負担しないまま1年が経過した時(※ 民法第253条2項)
  • 共有状態だと知らないまま、10年もしくは20年使用し続けている場合(民法第162条各項)

持分に相当する金銭を支払う必要があり、実質的には強制的に「買い取り」できるとする規定です。

相続開始後に共有状態を解消する場合

生前対策しないまま相続開始を迎えた不動産は、遺産分割協議で代償分割もしくは換価分割を検討します。この際に問題になるのは、以下のような点です。

【代償分割する場合】
  • 代償金は確保できるか
  • 今後名義人になる人に不動産経営のスキルはあるか
【換価分割する場合】
  • 売却手続きの事前準備(登記など)はどう進めるべきか
【共通の問題】
  • 相続不動産が空き家となっている場合、遺産分割協議中にどう管理するか
  • 相続人の中に高齢者や意思能力のない人がいるが、スムーズに手続きするどうしたらいいのか

このように生じた問題は、士業と不動産会社のどちらの専門分野か見分け、適宜相談先を切り替えなければなりません。

まとめ

不動産を共有名義にしておくと、やがて共有者同士で連携がとれなくなり、事実上の資産凍結状態に陥ってしまいかねません。連携が取れなくなる理由は、認知症の発症、相続を繰り返すことによる共有者の増加、親族同士の不仲など様々です。
今後共有名義化が予測される不動産がある場合、なるべく早めに回避・解消しなければなりません。その方法として、下記のようなものが提案できます。

  • 遺言や遺産分割協議による代償分割or換価分割
  • 家族信託を活用した管理処分権の集約
  • 所有主体の法人化
  • 持分買い取り・売却・分筆等による単独名義化

不動産の共有名義対策は、家族信託がおすすめです。次のオーナーに管理処分権を集約しながら収益は共有し、共有状態を完全に解消するための“出口”を複数用意する……とのような柔軟なプランを実行できるからです。
実際に対策をしていくには、今ある資産運用上の課題と経営ノウハウについて整理する必要があります。共有名義化対策の実践的な部分(家族信託の組成と設定・遺言公正証書の作成など)は士業の分野ですが、まずは不動産の専門家に相談してみるのがベストです。

遠藤 秋乃

遠藤 秋乃(司法書士、行政書士)

大学卒業後、メガバンクの融資部門での勤務2年を経て不動産会社へ転職。転職後、2015年~2016年にかけて、司法書士試験・行政書士試験に合格。知識を活かして相続準備に悩む顧客の相談に200件以上対応し、2017年に退社後フリーライターへ転身。

『このコラムの内容は掲載日時点の情報に基づいています。最新の統計や法令等が反映されていない場合がありますのでご注意ください。個別具体的な法律や税務等に関する相談は、必ず自身の責任において各専門家に行ってください。』

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