特別の寄与とは?
要件や請求方法、注意点まで解説!

特別の寄与とは?<br>要件や請求方法、注意点まで解説!

近年、相続法は様々な改正が行われ、残された配偶者の老後の生活資金の確保や居住権の保護を目的とした配偶者居住権や、法務局が遺言を保管する自筆証書遺言保管制度などが創設されました。この他に新しく「特別の寄与」というものが認められるようになりました。本コラムでは特別の寄与の概要や要件、また相続人以外の者に財産を遺す方法までを解説します。なお、特別の寄与は令和元年6月30日以前に発生した(被相続人が死亡した)相続には適用されませんので注意が必要です。

配偶者居住権の詳細はこちら

自筆証書遺言保管制度詳細はこちら(法務省) https://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html

特別の寄与の概要

民法1050条に規定された特別の寄与。簡単に説明すると「相続人以外の親族が被相続人に対して行った介護などの寄与に応じた金銭を相続人に請求できる制度」です。なお、特別の寄与を主張できるものを「特別寄与者」といい、特別寄与者が請求できる金銭を「特別寄与料」といいます。

特別の寄与ができた背景

相続法の改正前でも「寄与分」という制度がありました(民法904条の2)。これは法定相続分では実質的に不公平な相続分割になってしまう場合に主張されるものです。例えば、夫に先立たれた母親に息子と娘がいたとします。息子はろくに働きもせず、ギャンブル三昧。それに対して娘は献身的に母親の世話をして、更には足らない介護費を建て替えるなどもしていました。このとき母親に相続が発生すると、法定相続分では息子と娘で遺産の半分ずつを相続することになります(同法第900条)。しかし、これでは実質的には不公平です。そこで娘は自分が母親に渡していた金銭を寄与分として考慮したうえで遺産分割するように主張することができるのです。
この寄与分に関して、主張できるのは相続人に限られています。しかし、実際には相続人以外の者が被相続人となる者に寄与している場合も少なくなく、その場合は問題が生じます。具体的な事例を見ていきましょう。

父親X 妻と長男に先立たれ、長男の配偶者Yと二人で暮らしていた
長男A(故人) 父親Xより早くに死亡。Yとの間に子供はいない
長男の配偶者Y 長男A死亡後もXと暮らし、献身的に介護を行っていた
次男B 父親Xとは疎遠で10年以上会っていない

このような状況で父親Xが亡くなりました。この場合、相続人は次男Bの1人となるため、次男Bが父親Xの全財産を相続することになります。ここで問題になるのが、長男の配偶者Yです。Yは生前Xの介護を献身的に行っていたにもかかわらず、相続人ではないため遺産を受け取る権利がありません。さらに居住していた不動産がXの名義だった場合、その不動産は次男Bに相続されます。結果、Yは住む家を無くして路頭に迷うといった事態にもなりかねません(YはXの配偶者ではないため配偶者居住権もありません)

もし、長男Aが生きており父親Xの介護を行っていた場合は、次男Bに寄与分を主張することができます。しかしYは相続人ではないため寄与分を主張することはできません。このような不合理や不公平を是正するため、相続法改正により特別の寄与が認められるようになりました。上記の例では、YはXに対して行った寄与(介護)に応じた金銭を次男Bに請求することができるようになったのです。

要件

次に「誰が」「どんなことをした時に」特別の寄与を主張できるのか、要件を見ていきましょう。

誰が

まず、特別の寄与を主張できる特別寄与者は被相続人の親族に限られています。親族とは6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族を指します。なお、親族といっても相続人や相続を放棄した者、相続人の欠格事由に該当する者、相続排除された者は特別の寄与を主張することができません。具体的には子の配偶者、被相続人に子供がいる場合の兄弟姉妹などの相続人ではない親族が特別の寄与を主張できる者となります。また、判断の基準は相続発生時(被相続人が亡くなった時)なので、相続が発生した後に息子夫婦が離婚しても息子の元配偶者は特別の寄与を主張することができます。

どんなことをした時に

次にどんなことをした時に特別の寄与を主張できるのかを見ていきましょう。民法1050条では「被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした」ことと定めています。具体的には親族が被相続人の介護などを無償で行った結果、介護施設などに掛かる費用などを抑えることができ、被相続人の財産維持に寄与した場合などが挙げられます。また、親族が被相続人から給付を受けていたとしても、労働の対価とはいえないお小遣い程度の給付であれば、特別の寄与を主張することが認められています。

請求の方法

上記の要件に該当した場合、特別の寄与を主張し、特別寄与料を請求することが可能です。では、次に請求の方法について見ていきましょう。

誰が誰に対して

特別寄与料は、特別寄与者が相続人に対して直接支払いを請求します。なお、相続人が複数の場合は相続割合で分担することになります。例えば長男の配偶者が被相続人の長女と次男に特別寄与料として500万円を請求した場合は、それぞれ250万円ずつを負担することになります。

特別寄与料はいくらもらえるか

どのくらいの特別寄与料を請求できるかについてですが、具体的には決まっていません。
特別寄与料については当事者間の協議、つまり話し合いによって定められます。協議が整わない時や協議自体ができない時は家庭裁判所に「特別の寄与に関する処分調停」を申し立てることになります。家庭裁判所では、まず調停委員が間に入って話し合う調停手続きによる解決が図られます。調停手続きでも話し合いがまとまらない場合は、裁判官が特別の寄与を認めるか、認めるとしたら特別寄与料をいくらにするかを判断する審判手続きが行われます。

なお、家庭裁判所への申し立ては、特別寄与者が相続の開始があったこと及び相続人を知った時から6か月以内または相続開始の時から1年以内に行う必要があります(民法第1050条2項)。申し立てを行う裁判所は特別寄与料を請求する相続人の住所地を管轄する家庭裁判所です。

家庭裁判所への申し立ての詳細はこちら(裁判所)
https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_07_25/index.html

特別の寄与の注意点(相続税)

特別の寄与で注意すべき点として相続税が挙げられます。特別寄与料は被相続人から特別寄与者に遺贈されたものとみなされ、課税の対象となります(相続税法第4条2項)。さらに1親等の血族(親子)以外・配偶者以外の者が相続する場合、相続税は2割加算された額となります(同法18条)。なお、特別寄与料を支払った相続人は、相続税に申告時に課税対象の遺産から特別寄与料を差し引くことが可能です(同法第13条4項)

相続人以外に財産を遺す方法(被相続人の生前の対策)

特別の寄与によって被相続人に寄与した親族がその寄与に応じた金銭を相続人に請求することができるようになりました。ただ、被相続人が相続人以外の者に財産を遺したいという意思がある場合には生前に対策することが可能です。ここからは相続人以外の者に財産を遺す方法について、息子の配偶者に財産を遺す場合を例にとって見ていきましょう。なお、これらは財産を遺す者の生前、それも意思能力があるうちにしか行うことはできませんので早めの対策が必要となります。

① 遺言

皆様がまず思いつくのは遺言による対策ではないでしょうか。被相続人が遺言によって、息子の配偶者に財産を遺す意思を示せば、被相続人の希望通りの財産承継が可能となります(遺留分を侵害していた場合を除く)。なお、1親等の血族(親子)以外・配偶者以外の者に対する財産承継は相続税が2割加算される点は特別の寄与と同様です。

② 生前贈与を行う

次に考えられるのが、生前贈与をすることにより財産を遺す方法です。生前贈与は贈与税の対象となります。贈与税は1年間(1月1日~12月31日)にあった贈与の合計額から基礎控除額の110万円を差し引いた額に課税されます。つまり、1年間の贈与額が110万円以下の場合には贈与税はかかりません。

③ 死亡生命保険の受取人とする

死亡生命保険の保険金の受取人を息子の配偶者にすることも考えられます。また、死亡保険金は原則として遺留分の対象外なので、相続人に遺留侵害額請求を起こされる懸念を減らすことができます※。ただし、掛け金を被相続人が支払い、受取人を息子の配偶者とする死亡保険金はみなし相続財産として相続税の課税対象となります。その際には相続税額は2割加算となる上に、死亡保険金非課税枠(相続人一人につき500万円)の適用も受けられないため注意が必要です。

※ 死亡保険金が遺産と比較して多大なために、相続人の間に看過できない不公平を招くような場合には特別受益として、遺留分侵害額請求の対象となることがあります。

④ 養子縁組を行う

息子の配偶者と養子縁組を行えば、息子の配偶者を法定相続人とすることができます。また、相続が発生した際には、息子の配偶者は相続人として遺産分割協議に参加することになります。さらに養子縁組をした場合、息子の配偶者は被相続人の一親等(親子)になるため相続税の2割加算はありません。注意すべき点を挙げると、万が一息子夫婦が離婚しても養子縁組が自然に解消されるわけではないこと、事情が変わり養子縁組を解除(離縁)したくなったとしても、養親である被相続人と息子の配偶者である養子の双方の同意がなければ離縁することは難しい点があります。

⑤ 家族信託を行う

家族信託とは、財産を持っている人(委託者)が、信託契約や遺言などによって、信頼できる家族(受託者)に対し不動産・現金等の財産(信託財産)を託し、一定の目的(信託目的)に沿って、特定の人(受益者)のために、受託者がその財産を管理・処分する家族間の財産管理制度です。
家族信託では受益者が亡くなった後の次の受益者を指定しておくことが可能です。被相続人の死後の受益者を息子の配偶者にすることにより、被相続人の希望通りの財産承継が可能となります。また、家族信託は他の制度とは違い、息子の配偶者に相続が発生したときのことも定めることができます。具体的な事例で見てみましょう。

父親X 妻に先立たれ、長男夫婦と暮らしている
長男A 夫婦の間に子供はいない
長男の配偶者Y 父親Xの介護を献身的に行っている
次男B 遠方に住んでいるものの父親Xとの関係は良好
孫Z(次男の息子) 父親Xにとっては唯一の孫

父親Xは長男夫婦と同居しています。Xは自分の死後は自宅や現金を長男Aに相続させ、長男A亡き後はYに相続させて生活に困らないようにしたいと考えています。しかし、Y亡き後に自宅がYの親族に相続されることは望んでおらず、できれば次男の息子である孫Zに相続してほしいと考えています。
このような場合、家族信託の受益者連続信託で希望通りの財産承継が可能です。

  • 委託者:父親X
  • 受託者:長男A→次男B(父親X死亡後)
  • 第1受益者:父親X
  • 第2受益者:長男A
  • 第3受益者:長男の配偶者Y
  • 信託の終期:父親X、長男A及び長男の配偶者Yが死亡したとき
  • 残余財産の帰属先:孫Z

家族信託により、Yの生活を保障しつつ、その後の財産承継先を孫Zに指定する事ができました。このように民法上の規定とは異なり、複数世代にわたる財産の承継先を指定できるのも家族信託の大きな特徴です。

まとめ

以上が特別の寄与の説明となります。特別寄与料をいくらにするのか?そもそも特別の寄与を認めるのか?特別寄与者と相続人の協議がスムーズに進めば問題ないですが、そうでなかった場合はそれらの判断は家庭裁判所の裁判官に委ねられることになります。裁判官は寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、特別寄与料の額を定めます(民法第1050条3項)。裁判官が判断できるようにするためにも労務を提供した証拠(介護療養を行った日数や内容、被相続人の状態が分かる診断所や要介護認定通知書など)を残しておくことが重要であるといえるでしょう。

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『このコラムの内容は掲載日時点の情報に基づいています。最新の統計や法令等が反映されていない場合がありますのでご注意ください。個別具体的な法律や税務等に関する相談は、必ず自身の責任において各専門家に行ってください。』

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