所有者不明土地管理制度と管理不全土地管理制度
2023年4月1日から始まる新制度を解説

所有者不明土地管理制度と管理不全土地管理制度<br>2023年4月1日から始まる新制度を解説

2021年(令和3年)4月に民法等の改正が公布されました。相続登記の義務化(2024年4月1日から開始)や相続土地国庫帰属法(2023年4月27日から開始)が大きな目玉となっていますが、この他にも注目すべき新制度があります。それが「所有者不明土地管理制度及び所有者不明建物管理制度(以下、所有者不明土地管理制度)と「管理不全土地管理制度及び管理不全建物管理制度(以下、管理不全土地管理制度)です。本コラムではこれらの制度の概要や現行の制度との比較、手続きの流れなどを解説します。なお、これらの制度は2023年(令和5年)4月1日より開始(施行)されます。

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所有者不明土地管理制度

所有者不明土地管理制度は所有者不明となっている不動産について裁判所が管理人を選任する制度です。

所有者不明土地とは「登記記録では所有者がわからない、もしくはわかっていても連絡がつかない土地」のことです。所有者不明土地では不動産活用が困難になるなどの問題が発生する可能性が高く、それらの解決を目的として所有者不明土地管理制度が創設されました。

所有者不明土地管理制度のメリット(現行の制度との比較)

2022年現在でも管理する方がいない財産(不動産)について、管理人を選任する制度はあります。不在者(従来の住所または居所を去った者)の財産を管理する「不在者財産管理制度(民法第25条)や亡くなった方(被相続人)の相続人の存在が不明である場合に被相続人の財産を管理する「相続財産管理制度(民法第952条)です。
では、これらの制度と所有者不明土地管理制度とはどう違うのでしょうか。

管理単位の違い
所有者不明土地管理制度と現行の制度との最大の違いは「管理単位」です。まず、現行制度は「人単位」の管理を行います。対して、所有者不明土地管理制度は「不動産単位」の管理を行います。これによって以下の違いが生じてきます。
管理する財産の範囲
現行の制度では対象となる人(不在者や被相続人)の全財産を管理することになります。対して、所有者不明土地管理制度は特定の不動産のみを管理します。もちろん、現行の制度が必要な場面はあります。しかし、特定の不動産の問題のみを解決したい場合には、全財産を管理する必要はありません。結果、現行の制度では管理人の負担も大きく、管理する期間も長くなってしまう傾向にあります。
現行の制度と所有者不明土地(建物)管理制度の比較図
共有不動産の場合
共有不動産の場合はさらに違いが明確になります。例えば、登記上ではAさんとBさんの共有となっている建物があったとします。Aさんは既に亡くなっていて相続人は不明、Bさんは不在者となってます。この場合、人単位である現行の制度ではAさんに対して相続財産管理人、Bさんに対して不在者財産管理人と一人一人に管理人を選任する必要があり、それぞれの管理人はそれぞれの持分について管理することになります。一方、所有者不明土地管理制度は不動産単位の管理であるため、所有者不明建物管理人のみで当該建物全て(全共有者の持分)について管理することができます
現行の制度と所有者不明土地(建物)管理制度の比較図
対応範囲
現行の制度には所有者を全く特定できない不動産については対応することができないという弱点があります(建物が未登記だった場合などには所有者が特定できない場合があります)。所有者不明土地管理制度はそのような場合でも対応ができます。

このように比較すると、所有者不明土地管理制度は現行の制度の課題や弱点を補う制度だといえます。

所有者不明土地管理制度の手続き

様々なメリットがある所有者不明土地管理制度ですが、どのような手続きが必要なのでしょうか。次は所有者不明土地管理制度の手続きの流れについて解説します。

① 申立て

まず、手続きは不動産所在地を管轄する地方裁判所への申立てから始まります
ただし、誰でも申立てが可能というわけでなく、申立権者は所有者不明土地等の管理についての利害関係人及び地方公共団体の長等に限られています。なお、利害関係人については「公共事業の実施者など不動産の利用・取得を希望する者」や「共有地における不明共有者以外の共有者」などが想定されています。

また、申立ての際、申立人である利害関係人は予納金を支払う必要があります。これは不動産管理に必要な費用を確保するためです。「困っているから申立てしているのに、さらに予納金まで取るのか」と思われる方もいるかと思いますが、予納金がないと税金で管理費用を賄うことになってしまうためやむを得ないところではあります。
ちなみに前述の不在者財産管理制度や相続財産管理制度においても、申立て時に予納金を支払う必要があり、20~100万円が相場といわれています。ただし、これらの制度の予納金は対象となる人の全財産を管理するための費用となります。所有者不明土地管理制度では管理対象は特定の不動産のみであるため、予納金はそれより安くなることが想定されています。

② 異議申立期間の公告

その後、裁判所は当該不動産について、所有者不明土地管理制度の申立てがされた旨や異議を届け出ることができる旨を公告します。異議を届け出ることができる期間は1カ月以上の期間が定められます。

③ 管理命令の発令・管理人選任

裁判所が所有者不明不動産について管理が必要と認めた場合、管理人が選任され、管理命令が発せられます。なお、管理者は事案に応じて弁護士や司法書士、土地家屋調査士などの法律専門職が選任されることが想定されています。また、当該不動産の登記簿には管理人が選任された旨が嘱託登記(官公署が登記所に申請して行う登記)によって公示されます。

管理人の権限と義務

最後に管理人ができることやその責任について説明します。

管理人の権限
まず、管理人には対象となった不動産の管理権限が与えられます。また、不動産のみならず、不動産にある動産にも権限は及びます。
管理人は管理はもちろんのことですが、裁判所の許可を得れば不動産を売却する、建物であれば取り壊すなどの処分をすることもできます。つまり、管理人には処分権限も与えられているということです。他にも不動産を不法に占拠する者がいた場合の明け渡し請求なども管理人が原告として行うなど、訴訟の当事者となります。また、管理人は管理に必要な費用の前払いや報酬を受けることができます。
管理人の義務
管理人は所有者に対して善管注意義務を負います。また、管理対象が共有持分だった場合には共有者全員に対して誠実公平義務を負います。他にも、不動産を売却して金銭が生じたとき、管理人はその金銭を供託(法務局などの供託所に預けること)して、その旨を公告する義務があります。
【参考】善管注意義務
善管注意義務とは「善良なる管理者の注意義務」のことであり、立場・職業から鑑みて通常期待される程度の注意を払う義務のことです。所有者不明土地管理制度の場合は管理人として通常期待される程度の注意を払う義務があります。なお、前述の通り管理人には法律専門職の選任が想定されているので、要求される注意義務も厳しくなるものと考えられます。
また、善管注意義務より軽い注意義務として「自己の財産のおけるのと同一の注意義務」があります。つまり、善管注意義務においては自己所有のときよりも注意を払って管理する義務があると考えてよいでしょう。

管理不全土地管理制度

次は管理不全土地管理制度について説明します。管理不全土地管理制度は所有者による適切な管理が行われていないために、近隣に悪影響や危険を生じさせているまたは生じさせるおそれがある不動産について、裁判所が管理人を選任する制度です。

所有者不明土地管理制度のメリット(現行制度との比較)

2022年現在、管理不全になっている不動産に管理人を選任するといった制度はありません。管理不全の不動産のために被害を被っている方は、裁判で所有者を訴え、勝訴したうえで強制的に管理させるしかありません。それにおいても、所有者がかたくなに管理を行わなければ状況は手詰まりになってしまいます。
一方、管理不全土地管理制度は裁判所が管理人を選任するため、確実な管理が期待でき、危険や被害を除去することができると考えられます

管理不全土地管理制度の手続き

管理不全土地管理制度の手続きは所有者不明土地管理制度と同じく、利害関係人等からの申立て及び予納金の納付から始まります。なお、管理不全土地管理制度では「倒壊のおそれがある建物の隣地を所有している者」や「管理不全不動産により被害(臭気や害虫の発生)を受けている者」などが利害関係人として想定されています。

また、その後は異議申立期間の公告ではなく、所有者への陳述の聴取が行われます(緊急に対応が必要な場合は不要)。聴取後、裁判所の判断により管理人が選任され、管理命令が発せられます。管理人は所有者不明土地管理制度と同じく弁護士や司法書士等の法律専門職が想定されています。なお、所有者不明土地管理制度とは異なり、管理人の選任に関する登記はされません。

管理人の権限と義務

権限
管理不全土地管理制度における管理人も当該不動産を管理する権限があります。ただし、管理不全土地管理制度における管理行為は「擁壁の補修工事」や「ゴミの撤去・害虫の駆除」が想定されています。裁判所の許可を得ることにより、売却などの処分を行うこともできますが、所有者の同意も併せて必要となります。
また、管理不全土地管理制度の管理人は、当該不動産に関する訴訟では当事者(原告や被告)にはなりません。あくまでも当事者は所有者となります。
なお、管理に必要な費用の前払いや報酬を受けることができる点は所有者不明土地管理制度と同様です。
義務
所有者不明土地管理制度と同じく、善管注意義務・誠実公平義務・売却代金などを供託する義務があります。

まとめ

以上が所有者不明土地管理制度と管理不全土地管理制度の説明でした。
相続登記の義務化や相続土地国庫帰属法が「所有者不明土地の発生を予防する」ための方策であるのに対して、所有者不明土地管理制度は「所有者不明土地を活用する」ための方策であるといえるでしょう。また、管理不全の不動産により被害を被っている方にとっては管理不全土地管理制度は救世主になりうる制度だと考えられます。

それぞれの申立てにはいくらくらいの予納金が必要なのか、管理不全土地管理制度では司法書士や弁護士等が管理人に選任されることが想定されているが、その方たちが「擁壁の補修工事」や「ゴミの撤去・害虫の駆除」を行うことが可能なのかなどの制度的に不明慮な点はまだあるものの、今後も注目すべき制度であるといえるでしょう。

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『このコラムの内容は掲載日時点の情報に基づいています。最新の統計や法令等が反映されていない場合がありますのでご注意ください。個別具体的な法律や税務等に関する相談は、必ず自身の責任において各専門家に行ってください。』

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