相続土地国庫帰属法が2023年4月27日に施行!
対象の土地から利用方法までを解説

相続土地国庫帰属法を徹底解説

今年4月28日に相続登記の義務化(※)を含む「民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)」が公布されましたが、それと同時に新しい法律も公布されました。その名は「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(令和3年法律第25号)」です(以下、相続土地国庫帰属法)

相続土地国庫帰属法とはどんな法律なのか。この法律で何ができるようになるのか、どのように利用するのか。今回は相続土地相続国庫帰属法について解説します。
なお、相続土地国庫帰属法は2023年(令和5年)4月27日に施行されます。

※ 相続登記の義務化についての解説はこちら

相続土地国庫帰属法の概要

相続土地国庫帰属法とは「相続または相続人に対する遺贈によって土地を取得したものが法務大臣に対し、その土地の所有権を国庫に帰属させることについての承認を求めることができる制度」です。

つまり、この法律によって「相続等で取得した土地は国に引き取ってもらうことができる」ようになったということです。「せっかく持っている土地を国に渡してしまうなんてもったいない」とお考えの方もいると思います。ただ、近年は社会情勢の変化により、土地を手放したいというケースも増えてきており、そのようなニーズに応える法律であるといえます。

相続土地国庫帰属法と相続放棄

相続では、現金や株などの資産のみならず借金などの負債も承継の対象となります。つまり、親の借金を子が相続した場合は子に返済する義務が発生するということです。親の負債を相続したくない場合、相続放棄を行うことが考えられます。相続放棄を行うことによって、その相続人は初めから相続人ではなかったこととなるため、被相続人の資産及び負債を承継することはなくなります。

そして、相続放棄によって相続人が不在となった場合、相続財産は最終的には国庫に帰属することが民法に規定されています(第959条)

相続土地国庫帰属法においても、土地が国庫に帰属するという点では同じです。しかし、相続土地国庫帰属法は民法第959条で規定されている相続財産の国庫への帰属と以下の点で異なります。

  1. ① 相続放棄を行う場合、資産及び負債のすべての相続を放棄する必要があり、不要な土地や負債のみを放棄することはできません。相続土地国庫帰属法は不要な土地のみを国庫に帰属させることも可能です。
  2. ② 相続放棄は原則、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に行わなければなりません。(民法第915条)相続土地国庫帰属法ではそのような期間の制限はないので、いつ相続した土地についても国庫に帰属させることが可能です。
  3. ③ 民法第940条第1項(※)に相続の放棄をした者による管理責任が規定されています。つまり相続放棄をしたら相続財産を一切管理しなくてもいいというわけではありません。相続土地国庫帰属法では、土地の所有権を国庫に帰属させてしまえば管理義務は発生しません(そのかわり負担金を払う必要があります。詳細は後述します)

※ 民法第940条1項の改正(2021年4月28日公布。公布日より2年以内に施行)により、「相続財産を現に占有しているとき」のみ保存義務を課せられることとなります。また、保存義務の期限も「相続人又は相続財産の清算人に当該財産を引き渡すまでの間」となります。つまり、それらの者に財産を引き渡した時点で保存義務はなくなります。

相続土地国庫帰属法の対象

相続等で取得した土地を国に帰属させることができる相続土地国庫帰属法。不要な土地を国に渡すことにより、その管理義務からも解放されて一件落着に思えますが、話はそう簡単ではありません。次はこの法律の対象となる土地について解説します。

土地の取得理由

土地の取得理由、当該土地をどのような経緯で手に入れたのかが重要になってきます。この法律では、相続及び相続人への遺贈によって入手した土地のみが対象となっています。(同法第2条)つまり、売買など自ら積極的に取得した土地については国庫帰属の承認申請をすることができません。ただ、土地が共有に属していた(複数人で所有していた)場合、共有者の1人でも相続及び相続人への遺贈によって当該土地持分を取得していた場合には承認申請をすることが可能です。なお、その場合は共有者全員が共同して承認申請を行う必要があります(同法第2条第2項)

例えば、AさんとBさんが共同で土地を購入した後に、Aさんが亡くなりCさんがその土地の持分を相続した場合はBさんとCさんが共同で行うことにより、国庫帰属への承認申請をすることができます。

対象となる土地

対象となる土地も規定されています。まず、以下のいずれかに該当する土地はそれだけで承認申請をすることができません(同法第2条第3項)

  1. ① 建物の存する土地
  2. ② 担保権または使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地
  3. ③ 通路その他の他人による使用が予定される土地として政令で定めるものが含まれる土地
  4. ④ 土壌汚染対策法第2条第1項に規定特定有害物質(法務省令定める基準を超えるものに限る)により汚染されている土地
  5. ⑤ 境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地

また、以下のいずれにも該当しないと認めるときは、法務大臣はその土地の所有権の国庫への帰属についての承認をしなければならないとされています(同法第5条)逆にいえば、下記に該当する土地では承認申請が却下される可能性があるということです。

  1. ① 崖(勾配、高さその他の事項について政令で定める基準に該当するものに限る。)がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの
  2. ② 土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存する土地
  3. ③ 除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地
  4. ④ 隣接する土地の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の管理又は処分をすることができない土地として政令で定めるもの
  5. ⑤ 前各号に掲げる土地のほか、通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地として政令で定めるもの

要約すると、管理することができないもしくは管理をするのに過分な費用や労力がかかる場合には、承認申請を却下することができるということです。このように見ると、国庫帰属法を利用できる土地は限定的で、多くの土地が該当しないと考えられます。なお、上記の事由に該当することを知っていたにも関わらず虚偽の申請を行った結果、国に損害が生じた場合には、承認申請者はその損害を賠償する責任を負います(同法第14条)

相続土地国庫帰属法の利用方法

次に土地がどのような流れで国庫に帰属されるのか、またその際に承認申請をした所有者にどのような負担があるのかについて解説します。

国庫帰属への流れ

はじめに、相続土地国庫帰属法では申請への承認などの権限は法務大臣にあるとされていますが実際に手続きを行うのは、対象となっている当該土地を管轄する法務局であると考えられます(※)

※ 法務大臣の権限を法務局または地方法務局の長に委任することができる旨が規定されています(同法第15条)

  1. ① 承認申請書類の提出と手数料の納付
    承認申請者はその者と所有権の国庫帰属を請求する土地についての情報を記載した書類を提出します。またその際には、後述する承認申請に対する審査に要する実費、その他一切の事情を考慮して政令で定める額の手数料を納める必要があります(同法第3条)
  2. ② 承認申請に対する審査
    書類が提出され手数料が納付されたら、承認審査に対する審査が行われます。また、必要な場合は現地及びその周辺の実地調査を行います(どの程度の調査を行うかは現時点では不明です)
  3. ③ 負担金の納付
    審査をクリアして承認がされても、直ちに土地の所有権が国庫に帰属されるわけではありません。承認申請者は、国庫に所有権を帰属させる土地につき、国有地の種目ごとにその管理に要する十年分の標準的な費用の額を考慮して政令で定めるところにより算定した額の金銭を負担金として納付しなければならず(同法第10条)、納付したときをもって土地の所有権は国庫に帰属されることになります。なお、負担金の額の通知から30日以内に負担金の納付がなかった時には承認は取り消されます。

承認申請者の負担

所有者である承認申請者の負担としては

  1. ① 土地を相続土地国庫帰属法の対象に該当させるための費用
  2. ② 申請書類提出の際に払う手数料
  3. ③ 承認後に払う負担金があります。

まず、①土地を相続土地国庫帰属法の対象に該当させるための費用について、例えば建物が建っている場合には建物の解体、境界が定かではない場合には境界の確定をさせる必要があります。それぞれの費用の相場は、建物の解体の場合坪4~8万円、境界の確定測量は35万~80万円となり、所有者の負担によって行われます。※あくまでも参考金額です。

次に、②申請書類提出の際に払う手数料については、どの程度調査を行うかが現時点では定かではないので断言はできませんが、土地の土壌汚染調査を行う場合は数十万単位での費用がかかることが予想されます。

最後に、③承認後に払う負担金ですが、参考として200m²の国有地(宅地)の10年分の管理費用は、約80万円程度となっています。また、この負担金は10年分を一括で支払う必要があります。

これらを合計すると数十万単位、場合によっては数百万単位の負担が発生することが考えられます。

まとめ

以上が相続土地国庫帰属法の解説となります。結論からいえば、適用される土地が限定的であり、なおかつ申請者の金銭的負担が過大である法律であるといわざるを得ません。確かに致し方ない点もあります。例えば、負担金が無ければ国庫に所有権が帰属された土地の管理費用は国、ひいては国民の税金によって賄われることとなってしまいます。

ただ、その結果として活用が難しい法律となっていることは事実です。現時点において、相続等で土地を取得したものの自分では利用する予定がなく、管理の手間や固定資産税の納付などの負担ばかりかかるので、その土地を手放したいとお考えの方は、まず地元の不動産会社へのご相談をお勧めします。

なお、施行後5年を経過した場合において、この法律の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとされています。つまり、今後の状況によっては活用が見込める法律となる可能性があるので、注視すべき法律であるといえるでしょう。

坂寄 賢一

坂寄 賢一(行政書士・家族信託専門士)

 

『このコラムの内容は掲載日時点の情報に基づいています。最新の統計や法令等が反映されていない場合がありますのでご注意ください。個別具体的な法律や税務等に関する相談は、必ず自身の責任において各専門家に行ってください。』

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