2024年4月16日

賃貸オーナー必見!
節税対策の裏にあるアパートローンの落とし穴とは

賃貸オーナー必見!<br>節税対策の裏にあるアパートローンの落とし穴とは

アパートやマンションの経営は、魅力的な投資先の1つです。
特に、節税対策としての効果は高く、家賃収益も入るなど多くのメリットがあります。
しかし、アパートローンを利用する際は、抑えておかなければならないポイントがあります。節税を目的としたアパート購入は、適切な知識と計画がなければ予期せぬ落とし穴にハマってしまう恐れがあるのです。本記事では、節税対策になるポイントとアパートローンの利用方法と注意すべきポイントについて詳しく解説します。

アパートローンとは?

アパートローンとは、不動産投資を目的としてアパートやマンションなどの賃貸物件を購入する際などに利用される専用の融資です。通常、銀行や信用金庫といった金融機関が提供していて、物件自体がローンの担保となるケースが一般的です。

アパートローンを利用する最大のメリットは、大きな初期投資をせずに不動産投資が可能になる点です。これにより、手持ちの資金が少ない方であっても、賃貸経営による家賃収益を得ることができます。また、アパートローンの利息は損益計算書上の必要経費として計上できるため、所得額を下げることで税金対策としても有効です。

節税対策としての主なメリット

アパートローンを組むことで、節税対策としていくつかのメリットが生じます。
以下では、具体例として固定資産税・相続税の節税対策についてご紹介します。

固定資産税の節税

固定資産税は、土地や家屋の所有者が支払う税金です。
この固定資産税は、アパートを建てることで税金対策へと繋がります。というのも、住宅用地の特例(アパートなどの居住用家屋が建てられている土地の税負担を軽減する制度)を活用すれば、土地の税評価額が大幅に下がり、結果として支払う固定資産税を抑えることができるのです。アパートが建っている土地と建っていない土地とを比較すると、固定資産税の差は大きなものとなります。資産として土地をお持ちの方は、手持ちの現金がない場合でも、融資を利用してアパートを建築することで、長期にわたる節税効果が期待できます。

相続税の節税

勘違いされがちですが、アパートローンを組むことが相続税の節税に繋がるわけではありません。アパートローンによって借りた現金でアパートを建築し、資産が現金からアパートに変わることが節税へと繋がります。というのも、賃貸アパートは現金と比較すると相続税評価額が低く、賃貸することによってさらに不動産の評価額を下げることができるのです。

また、相続の対象となる資産は、プラス資産だけでなくマイナス資産も含まれるため、ローンを組むことで、トータルの相続財産の評価額を下げることが可能となります。
相続財産全体の評価額を下げることが、結果として相続税の節税へと繋がります。

アパートローンの落とし穴

アパートローンを利用した節税対策は、表面上多くのメリットを提供しますが、賃貸オーナーが注意すべきいくつかの落とし穴があります。
具体的な落とし穴は以下の4つです。落とし穴となり得るポイントを理解し、適切に対処することが、アパート経営で失敗しないためには必要です。

  1. ① 空室だらけによる赤字
  2. ② キャッシュフローへの影響
  3. ③ 利息負担の増加
  4. ④ 資金繰りの見通しの甘さ

①空室だらけによる赤字

アパート経営における家賃収益の変動は、いつの時代も避けられない課題の一つです。
新築のうちは高額の賃料設定が可能で満室状態を維持しやすいものの、時間が経つにつれて建物の魅力は低下し、賃料も下がる傾向にあります。
加えて、入居者が退去する度に発生する原状回復費用や入居募集のための広告費など、経営コストは増加する一方で、空室リスクも高まります。

空室リスクを軽減する手段として、家賃保証が考えられます。
物件全体を一括で管理会社などに貸し出し、定期的な家賃収入を保証してもらう方法です。しかし、市場価格よりも保証される家賃が低めに設定されることが多く、契約更新時にさらに家賃が下がる可能性もあります。また、入居者が退去した場合でも保証家賃は支払われますが、原状回復に必要な費用は自己負担が一般的です。つまり、家賃保証があるからといってすべてのリスクが解消されるわけではなく、慎重な管理が求められます。

②キャッシュフローへの影響

継続的なローンの返済は、キャッシュフローに大きな影響を及ぼします。
家賃収入が安定していても、ローンの返済額が収入を上回る月があれば、賃貸経営は赤字に陥る可能性があります。特に市場が不安定な時期には、入居率の低下や家賃の値下げがキャッシュフローに悪影響を及ぼし、経営の持続を脅かす危険があります。

利息負担の増加

アパートローンを利用する際の落とし穴の一つは、利息負担の増加です。
ローンを組むことにより、当初は資金調達が容易になりますが、長期にわたって利息を支払うことを念頭におかねばなりません。アパートローンの利息は、特に長期間にわたる返済計画においては、最終的には本体価格を大きく上回る可能性があるため注意が必要です。

資金繰りの見通しの甘さ

購入資金の大部分をアパートローンで賄った場合、資金繰りに注意しなければなりません。
一般的に、物件価格の約70%をローン、残り30%は自己資金から捻出することが推奨されています。しかし、過度な借入れや自己資金の過剰投入は、資金繰りにリスクをもたらす危険があります。具体的には、ローンの返済や維持管理費、将来の大規模修繕など長期に渡る経費と、予想される空室率を考慮した上、十分な予備費を確保しておくことが重要です。

アパート購入時のお勧めの買い方

節税対策としてアパートを購入・建築するのであれば、現金での一括購入がお勧めです。なぜなら、利息を負担する必要がないため、資金繰りも容易になります。
また、現金一括購入が難しい方であっても、ローン前提であれば元金均等返済がお勧めです。

以下にてそれぞれ詳しくご説明します。

現金で購入する

現金でアパートを購入することは、長期的に見れば大きな安定性をもたらします。
ローンによる利息負担がないため、購入後のランニングコストを抑えることができ、収益性の向上が期待できます。また、市場が不安定な時期でも、ローン返済がまったくないため、経済的な安心感があります。しかし、大きな額の現金を一度に投資するため、他の投資機会を逃す可能性がある点は慎重に検討する必要があります。

ローンが前提であれば元金均等返済がお勧め

ローンを利用してアパートを購入する場合は、元金均等返済方式がお勧めです。
この返済方式では、毎月の返済額に含まれる元金の割合が一定であり、利息分が徐々に減少していくため、最初は負担が大きいものの、徐々に返済額が軽減されていきます。
これにより、物件の資産価値が経年により落ち込むタイミングで、キャッシュフローのマイナスを抑えることができるため、長期的な資金繰りを安定させることが可能です。

特に、将来的な家賃収益と物件の価値減少を考慮した場合、元金均等返済は資産運用の効率性を高める選択と言えるでしょう。ただし、初期の返済負担が重いことと、長期目線では物件の修繕も必要になることから、資金の準備と収益計画を慎重に立てる必要があります。

節税よりも大切なもの

アパート経営や不動産投資において、節税対策は確かに重要です。
しかし、それ以上に重視すべきはキャッシュフローの管理です。

税金の額は収益に応じて変動しますが、実際の運用で最も重要なのは、事業が生み出すキャッシュフローの安定性と持続性です。利益が出ていたとしても、現金として手元に残らなければ意味がありません。アパート経営する上では、キャッシュフローを正確に掴むことが、黒字倒産や資金ショートなどのリスクを回避することに繋がります。

税法上の収支と実際のキャッシュフロー

税法上の収支計算は、アパート経営の利益や損失を把握する上で基本です。
しかし、この数字だけでは事業の実態を完全に把握することはできません。なぜなら、計上される費用の中には現金が実際に動かない項目も含まれているからです。たとえば、減価償却費は実際の現金支出ではありませんが、税法上の収支計算では経費として扱われます。実際のキャッシュフローを見極めることが、資金繰りを安定させるために重要です。

賃貸経営におけるキャッシュフローの最適化

賃貸経営の成功は、キャッシュフローの最適化にかかっています。
そのためには、毎月の家賃収入と、ローン返済、管理費、修繕費などの支出のバランスをどのように取るかが重要です。利益が多ければ税金が増えるという事実よりも、定期的に安定した現金を手元に残るようにすることが、長期的な賃貸経営で成功するためには欠かせません。よって、節税対策にだけ注視するのではなく、常にキャッシュフローを監視し、必要に応じて都度調整を行うことが、アパート経営で失敗しないためには重要です。

まとめ

アパートをはじめとする不動産経営は、投資先としてのメリットが多くあります。
しかし、節税対策を含めたアパート・マンションの活用には慎重な計画と理解が必要です。
特に、アパートローンの利用は、適切な知識と計画なしには予期せぬ落とし穴に陥るリスクがあります。確かに、アパートローンを利用した節税対策は大きなメリットをもたらしますが、それらを超える重要な要素がキャッシュフローの管理です。

というのも、税法上の収支と実際のキャッシュフローは必ずしも一致しません。
実際に手元に残る現金の流れを正確に把握し、管理することが、不動産経営においては重要です。収益があっても、それが現金として手元に残らなければ持続は難しくなります。

賃貸経営におけるキャッシュフローの最適化は、節税対策を行う上で基盤となり、長期的な安定性と収益性を確保するためにも必要です。もし、アパート経営や不動産投資に不安を感じるという方は、税理士といった専門家への相談を推奨します。

永瀬優

永瀬優

大学卒業後、地域を代表する法律事務所にパラリーガルとして入所。弁護士の下で債務整理・相続・離婚など、さまざまな法律実務に10年間携わった後に退所。法律実務で身に着けた知識や経験を活かして、法律ライターへと転身し、現在に至る。

『このコラムの内容は掲載日時点の情報に基づいています。最新の統計や法令等が反映されていない場合がありますのでご注意ください。個別具体的な法律や税務等に関する相談は、必ず自身の責任において各専門家に行ってください。』

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