リバースモーゲージをご存じですか?メリットや注意点を解説!

リバースモーゲージをご存じですか?メリットや注意点を解説!

リバースモーゲージとは、⾃宅を担保として融資取引することで、引っ越さずに家の価値を⼿元資⾦に換えられる⾦融商品です。取引後の返済は終⾝利払いのみとなり、死亡すれば⾃宅の売却代⾦を残⾼に充当して完済扱いとしてもらえます。

以上のように、⽼後の不安として挙げられる「資⾦不⾜」と「空き家問題」を⼀挙に解決する⼿段とされるリバースモーゲージですが、調達できる額や債務リスクには⼗分注意しましょう。

1.リバースモーゲージとは

リバースモーゲージとは、居住⽤不動産の評価額内で借⼊し、亡くなった時はその不動産の売却代⾦で⼀括返済する「不動産担保ローン」の⼀種です。主に銀⾏が取り扱っており、リースバック・住宅ローン等とは異なる仕組みを持ちます。

1-1.死亡時に不動産で借⼊残⾼を返済する契約

リバースモーゲージの借⼊残⾼は、契約時に担保とした不動産(通常は居住⽤不動産)で弁済されます。債務者の死亡時に担保不動産を売却し、その売却代⾦を借⼊残⾼に充当する仕組みです。

また、弁済をより確実にする観点で、借⼊限度額は担保不動産の評価額以下とされます。⾼齢期に⾼額の借⼊をしても、原則上、死亡と同時に担保不動産を使って完済できるのです。

1-2.リバースモーゲージを取り扱う⾦融機関

リバースモーゲージは、全国の銀⾏や信⽤⾦庫が取り扱っています。公的にも、社会福祉協議会では「不動産担保型⽣活資⾦」と呼ばれる制度、住宅⾦融⽀援機構(フラット35で知られる)では「リ・バース60」と呼ばれる商品が⽤意されています。

契約⽅法や融資条件を吟味し、ニーズに合う商品または制度を利⽤するようにしましょう。

1-3.リバースモーゲージとリースバックの違い

リバースモーゲージとリースバックは、どちらも転居せずに居住⽤不動産を使って資⾦調達する⼿段ですが、契約の種類が全く異なります。リバースモーゲージは「担保付き融資」であるのに対し、リースバックは「売買契約+賃貸借契約」で資⾦調達する⽅法です。

▼ リバースモーゲージで居住を継続できる理由

融資取引は、必ずしも担保を必要とするとは限りません。消費者⾦融がその代表です(無担保融資)。融資取引の⼀種であるリバースモーゲージは、⾼額融資となること、契約者が⾼齢で弁済前に死亡してしまう可能性があることを考慮し、あらかじめ⾃宅を弁済にあてる条件を組み込むものです。

▼ リースバックで居住を継続できる理由

⼿元資⾦を得るための売買取引をすれば、代⾦と引き換えに売買対象となる権利を失うのは当然です。リースバックでは、売主と買主の間で賃貸借契約を結び、失ってしまう所有権の代わりに借主の権利を得ます。これにより、売却代⾦から家賃を払いつつ住み続けることが可能です。

1-4.リバースモーゲージと住宅ローンとの違い

リバースモーゲージと住宅ローンは、返済を前提とする資⾦提供である点に違いはありません。違いは、返済⽅法と契約者死亡時の弁済の仕組みです。弁済の仕組み上、不動産を⼿元に残せるか否かの違いもあります。

▼ リバースモーゲージの返済の仕組み

債務者が毎⽉払うのは「利息」の部分のみです。原則として、⽣前のうちに元⾦部分の⽀払いを求めらることはありません。死亡した時は、売却代⾦を元⾦に充当して完済とするため、担保不動産は当然失われてしまいます。

▼ 住宅ローンの返済の仕組み

債務者が毎⽉払うのは「元⾦+利息」です。払い終える前に死亡した時は、契約時に加⼊した団体信⽤⽣命保険(団信)の保険⾦が残⾼に充当され、完済とします。ローン完済となれば、抵当権抹消を経る必要はあるものの、購⼊物件は引き続き所有できます。

2.リバースモーゲージの⼿続きの流れ

リバースモーゲージの契約⼿続きは、申込・審査・契約締結・融資実⾏との順で進み、基本的にはクレジットカード等の個⼈向けキャッシング商品等と同じです。違いになるのは、抵当権(または根抵当権)の設定がある点です。

2-1.申込~審査

リバースモーゲージの契約書類を提出すると、融資取引のための審査が開始されます。審査基準は⾦融機関によって異なりますが、最も重視されるのは、申込者の年齢・収⼊状況・担保不動産の評価額の3点です。

また、契約締結時には、同居する配偶者等を連帯保証⼈にする必要があります。連帯保証⼈は申込者(契約者)と同額の返済義務を負うため、本⼈と話し合って納得してもらう必要があります。

2-2.抵当権・根抵当権の設定

リバースモーゲージの与信審査に通って正式な契約⼿続きに進むと、居住⽤不動産につき、抵当権または根抵当権の設定が必要です。⼀括融資は抵当権、極度額融資(限度額内で繰り返し借⼊できる契約)では根抵当権が設定されます。

抵当権設定・根抵当権設定は、法務局での登記申請によって⾏われます。登記申請には、登記簿謄本や不動産の評価額などの書類が必要です。

▼ 抵当権設定登記・根抵当権設定登記の必要書類

  • 権利証または登記識別情報
  • 印鑑証明書(登記申請⽇前の3ヶ⽉以内に発⾏されたもの)抵当権設定契約証書
  • 契約する⾦融機関(抵当権者)が作成した委任状
  • 融資を申し込んだ⼈(抵当権設定者)が作成した委任状

2-3.契約内容に沿った借⼊・返済

リバースモーゲージで融資が実⾏された後は、利払いを続けます。滞納しない限りは⽣涯に渡って利息を⽀払うだけでよく、⼀括返済や繰上返済を求められることはありません。ただし、利率の変更により⽀払額が変わる可能性がある点には要注意です。

2-4.⾃宅売却による⼀括返済

⾃宅売却による⼀括返済は、リバースモーゲージ契約に基づき、債務者の死亡時に⾏われます。売却⼿続きは債権者が⾏うため、相続⼈にやってもらう必要があるのは死亡連絡のみです。

なお、売却代⾦がローン残⾼を上回らない場合、残りの⾦額は相続⼈の負担となります。

3.リバースモーゲージのメリット

リバースモーゲージの特徴かつメリットは、融資を断られやすい⾼齢者にとって貴重な資⾦調達⼿段でありながら、空き家の相続対策にもなる点です。上⼿に活⽤できれば、⽼後の⼼配を⼀挙に解決する⼿段になります。

3-1.中⾼年や⾼齢者でも借り⼊れしやすい

不動産を使って弁済するリバースモーゲージは、⼀般的な融資商品と⽐べ、年齢制限が緩いメリットがあります。実のところ、利払いによる過剰負担を避けるため、申込みできる⼈を中⾼年から⾼齢者の範囲とする商品がほとんどです。弁済前の死亡により貸し倒れになるリスクがないか、極めて低いと考えられるためです。

3-2.居住したまま資⾦を得られる

リバースモーゲージの最⼤のメリットは、住み慣れた家を離れずに資⾦調達を可能とする点です。

従来、お⾦に換えられるものが⾃宅しかない時は、売却によって転居を強いられるのが⼀般的でした。リバースモーゲージは例外であり、⾒⽅によっては「持ち家の価値をデメリットなしで最⼤限活かす⼿段」とも⾔えます。

3-3.返済負担が少ない

返済負担の⼩ささは、リバースモーゲージの⼤きなメリットのひとつです。具体的には、利払いのみで済むという点が挙げられます。

利率は⺠間・公的制度共に利率は年3%以下であり、個⼈向けキャッシング商品や事業性融資(政府系⾦融機関を除く)と⽐べると低額です。⽣きているうちは元⾦の返済を求められることがない点でも、返済期間が決まっている他の融資商品と⽐べ、リバースモーゲージは負担が著しく少ないと⾔えます。

3-4.債務相続を原則回避できる

原則として債務相続を回避できるのは、借⼊時点で既に⾼齢の債務者にとって、リバースモーゲージの⼤きなメリットと⾔えます。相続⼈に返済を引き継ぐリスクが懸念されますが、リバースモーゲージならその⼼配がほとんどありません。

3-5.空き家対策にもなる

リバースモーゲージは、空き家問題の備えにもなります。居住予定のない家を承継することで、維持管理費や固定資産税により⾚字が続き、価値が低い等の理由で収益化の⽬途も経たない「負動産」と化してしまう問題です。

死後空き家となった家を売却してもらえるリバースモーゲージなら、相続⼈⾃⾝で出⼝戦略を計画・実施する必要がありません。⽼後資⾦の準備・負動産化の回避をまとめて⾏える、⼀⽯⼆⿃の⼿段と⾔えます。

4.リバースモーゲージの注意点

⼀⾒メリットしかないように⾒えるリバースモーゲージですが、融資取引後に失敗したと感じるケースが少なくないようです。その理由として、次の4つの注意点及びリスクを意識しなかったことが挙げられます。

4-1.融資で得られる⾦額は売却代⾦より少ない

リバースモーゲージで調達できるのは、せいぜい担保不動産の評価額の7割程度です。評価額全部を100%貸し付けてもらえるわけではない点に注意しましょう。融資希望額が⼤きい場合は、リバースモーゲージではなく、売却が適切です。

4-2.債務相続を100%回避できるわけではない

リバースモーゲージで最も注意したいのは、⾃宅売却での⼀括弁済が100%成功するとは限らず、借⾦問題を死後継承してしまう可能性がある点です。借⼊残⾼を相続⼈に引き継いでしまう原因として、担保価値の低下、⽣前の滞納、不動産市場の不調や⾃然災害等、さまざまな問題が考えられます。

4-3.返済負担が当初より⼤きくなる可能性がある

リバースモーゲージは変動⾦利制を採⽤するのが⼀般的です。変動⾦利制のローンでは毎年1〜2回のペースで利率の⾒直しがあり、結果、返済負担が当初より⼤きくなる可能性があります。

当初の変動予想を超えて利息が増えた時は、収⽀が⾚字となり、滞納からの債務整理に発展する恐れがあります。そうなると、借⾦による⽣活の破綻は避けられず、債務相続の回避も難しくなります。

4-4.⻑⽣きするほど債務リスクが⼤きくなる

リバースモーゲージの利払い期間は不確定要素に満ちており、⻑⽣きすればそれだけ債務リスクに⾒舞われる懸念が強くなります。滞納はともかく、担保価値低下、健康状態の悪化による収⼊減少、⾦利変動による返済額の上昇は、⾃⼒で避けようがありません。⽣活費として毎⽉⽀出するうち、融資で得た⼿元資⾦が尽きてしまう場合も考えられます。

基本的には、まとまった資⾦がいよいよ必要になったタイミングや、借⼊⾦の使い道がはっきりとしていて他に調達⼿段がない時に利⽤すべきです。

5.リバースモーゲージ利⽤時の相続対策

リバースモーゲージを利⽤する際は「⽣前の滞納対策」と「残⾼を解消できなかった時の債務相続対策」の両⽅が必要です。認知症になった時も期⽇通りの利払いを続け、預貯⾦・現⾦につき出来るだけ節税して相続⼈に最⼤限残してあげる必要があります。そこで考えられるのが、⽣前贈与または家族信託により、借⼊⾦の⼀部を相続⼈に管理してもらう⽅法です。

5-1.⽣前贈与による相続対策

暦年贈与の基礎控除額(課税年度毎に110万円)以内でリバースモーゲージの借⼊⾦を贈与し、相続⼈固有の資産とする⽅法です。相続税の課税を回避でき、資⾦を最⼤限保全する効果があります。

5-2.家族信託による相続対策

契約で信託財産にリバースモーゲージの借⼊⾦を組み⼊れて、相続⼈を受託者とし、⽣前のうちに管理を任せる⽅法です。担保不動産以外の収益性資産の運⽤・活⽤に使ってもらったり、認知症発症時の利払いを滞りなく続けてもらうのに役⽴ちます。

6.まとめ

リバースモーゲージは、⾃宅を⽤いた不動産担保ローンです。融資取引が実⾏された後は、終⾝利払いのみ⾏い、死後は債権者によって担保不動産の売却とその代⾦を使った完済が⾏われます。「転居せずに⾃宅の価値をお⾦に換えられる」「借⼊残⾼も居住予定のない家も相続⼈に残さずに済む」といった点がメリットであり、上⼿に活⽤すれば⽼後の不安を⼀挙に解消できます。

もっとも、死後の完済は確定ではなく、⻑⽣きすればそれだけ債務リスクが⼤きくなる点は要注意です。⽼後資⾦に不安がある時は、リバースモーゲージを含めて安易に⾦融商品に⾶びつくことなく、最初に弁護⼠、司法書⼠等の専⾨家に相談するようにしましょう。

遠藤 秋乃

遠藤 秋乃(司法書士、行政書士)

大学卒業後、メガバンクの融資部門での勤務2年を経て不動産会社へ転職。転職後、2015年~2016年にかけて、司法書士試験・行政書士試験に合格。知識を活かして相続準備に悩む顧客の相談に200件以上対応し、2017年に退社後フリーライターへ転身。

『このコラムの内容は掲載日時点の情報に基づいています。最新の統計や法令等が反映されていない場合がありますのでご注意ください。個別具体的な法律や税務等に関する相談は、必ず自身の責任において各専門家に行ってください。』

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