2021年5月13日

「認知症かな?」と思ったときにできる検査と費用

「認知症かな?」と思ったときにできる検査と費用

日本の高齢化社会の到来に伴い、認知症患者も増加傾向です。2025年には高齢者の5人に1人が認知症となる、という統計もあります。認知症は、他人事ではありません。まさにいつ自分がそうなってもおかしくない病気です。しっかり知識を蓄えて、備えなければいけませんね。

最近忘れっぽいんだよね。認知症かな?と心配になる方も多いと思います。もちろん、認知症は「病気」ですので、認知症と診断するには診断の根拠があります。ある外来患者さんを例にして病院受診後の流れを見てみましょう。この物語は医者A先生、76歳女性の患者Bさん、Bさんが認知症ではないかと心配する娘Cさんの物語です。

C「最近母が忘れっぽくて、認知症じゃないかと心配しているんです。」

B「私はそんなに生活に困っていないし、認知症ではないと思っているよ。娘が勝手に言っているだけなんだ。」

A「わかりました。まず認知症の疑いがあるかどうか、お話を聞かせてください。」

まず病院受診をすると、医師から問診があります。ただ忘れっぽいからといって認知症と診断するわけではなく、認知症の特徴的な症状があるかないか、ほかの病気が紛れていないかを確認するため、患者さんだけでなくその家族からも話を聞きます。

具体的には認知症の特徴的な「中核症状」と「周辺症状」を確認します

中核症状には、(1)記憶障害(2)見当識障害(3)理解・判断力の障害(4)実行機能障害(5)失語・失認・失行の5つがあります。

(1) 記憶障害は、その名の通りですが、物事が覚えられなくなる症状を指します。幼少期の記憶などは残りやすいですが、新しいことを記憶できなくなることが特徴的です。A「朝ごはん、何を食べたか覚えていますか?」「お隣さんのお名前、言えますか?」というように確認します。

(2) 見当識障害は、自分の身の回りのことを正しく認識する力が低下することを指します。これを調べるには、人・時・場所を確認します。A「今日が何月何日かわかりますか?」「ここがどんな場所かわかりますか?」「私の職業を教えてください」というように確認します。

(3) 理解・判断力の障害は、物事の理解に時間がかかり、一度に複数のことを言われると理解できなくなる症状を指します。また、状況に応じて適切な行動が取れないことや、普段と異なる出来事に対して混乱することがあります。これらのようなエピソードはないか、確認します。

(4) 実行機能障害は、順序立てて物事を行うことができなくなります。やり方がわからなくなってしまうため、何もやりたくなくなるという悪循環になります。A「最近使い方がわからなくなった電化製品はありますか?」「食事の準備はできていますか?」というように確認します。

(5) 失語・失認・失行の有無も確認します。
失語は、聞く・話す・読む・書くなどの言語機能が失われた状態で、多彩な症状を示します。会話が成立しないことも多いため、この症状が目立つことで認知症を疑う家族もいます。
失認は、自分の身体が感覚として感じているにも関わらず、その意味が分からない状態です。例えば、自分の身体の半分の空間が認識できない半側空間無視の症状があれば、歩行時に(右側あるいは左側の)壁や物などにぶつかりやすくなります。
失行は、目的を持った行動の方法が分からなくなってしまう状態です。A「普段はできていた、服のボタンをはめること、料理すること、片付けることなどができなくなっていませんか?」というように確認します。

また、認知症の周辺症状の有無も確認します。認知症は中核症状以外にも、付随して引き起こされる症状(周辺症状)があります。失禁、妄想、睡眠障害、異食、暴言暴力、徘徊、うつ症状など多彩な症状です。A「外に出るとトイレに迷い、失禁してしまったりしませんか?」「夜眠れなかったり、暗い発言が多くなったりしていませんか?」などというように確認します。

なお、医師からの問診だけではなく、家族が気になっている症状の変化も診断のヒントになるため、ぜひ医師に伝えてください。

C「昔は得意だった料理の失敗が増えました。焦がしてしまったり、塩と砂糖と間違えて入れたりしてしまいます」とご家族から話が聞けました。

A「そうですか、少し認知症が疑わしいので検査をしていきましょう」

認知症の可能性があると判断されればスクリーニング検査に移ることになります。スクリーニングとは簡便で低侵襲でできる検査で、短時間で認知期低下の具合を調べることができます。

代表的なものに改定長谷川式認知症スケール(HDSR)、ミニメンタルステート検査(MMSE)などがあります。どちらも6-10分程度で行う検査です。年齢や見当識を確認したり、短期記銘力や計算能力を確認したりする質問などから構成される30点満点の検査です。長谷川式検査で20点以下は認知症の疑いがあるとされ、ミニメンタルステート検査では23点以下が認知症の疑いがあるとされます。ここまでの診察検査だけであれば比較的安く、2千円程度になります。

A「改定長谷川式認知症スケールで20点でした、認知症の疑いがあります。いくつか追加で検査をしましょう。」

みなさんが想像される認知症は、アルツハイマー型認知症を想像される人が多いと思います。アルツハイマー型認知症は脳細胞にベータ蛋白質などの異常な沈着物質が定着することで脳細胞が死滅し、脳萎縮をきたし脳機能が低下する病気です。しかし、中には全く別の原因で、認知症に似たような症状を呈する病気があります。例えば、脳の病気で慢性硬膜下血腫や正常圧水頭症などが例にあがりますが、そのほかにもホルモン異常をきたす甲状腺機能低下症や、ビタミン欠乏症、うつ病やてんかんなど精神神経系統の疾患も含まれます。認知症というのは基本的には根治が不可能で、症状を緩和させることしかできません。しかし、先に挙げた慢性硬膜下血腫や甲状腺機能低下などの病気は手術や投薬によって治療可能な病気です。そのような病気との鑑別をする必要があります。

A「認知症の疑いがありますが、CTで脳を調べたり、血液検査をしたりして隠れた病気がないか調べていきましょう」

頭部CTや血液検査を追加すると多少費用は掛かります。高齢になってくると原因が一つだけ、とは限りません。様々な疾患が合併している可能性があります。いろいろな可能性を考えながら、検査項目を追加していくと検査項目や条件によって異なりますが、数千円から1-2万円程度かかる可能性があります。

A「頭部CTでは治療可能な正常圧水頭症や硬膜外血腫はありませんでした。血液検査でも、ホルモン異常などはなかったです。」

C「では、母はいったいどんな認知症の可能性があるのですか?」

認知症で代表的なものはアルツハイマー型認知症ですが、実はそのほかにもタイプがあります。例えば、レビー小体型認知症や血管性認知症などです。脳細胞が死滅して脳萎縮をきたし、脳機能が低下するとういところは同じですが、その原因に違いがあります。

アルツハイマー型認知症は認知症全体の5割程度を占めるといわれますが、脳にアミロイドβやタウと呼ばれる特殊な蛋白質が蓄積し、それが原因で脳細胞が死滅します。その結果神経細胞がうまく信号を伝達できずに、様々な脳機能の低下を引き起こすのです。

レビー小体型認知症は、アルツハイマー型認知症に次いで多く全体の2割程度を占めています。アルツハイマー型認知症は女性に多い一方で、レビー小体型は男性に多いといわれています。アルツハイマー型認知症と似ていますが、レビー小体という特殊な蛋白質が脳細胞に蓄積し、それが原因で脳細胞が死滅します。

脳血管性認知症は、脳梗塞や脳出血など脳の血流障害によって脳細胞が死滅すること起きる認知症です。脳血管が血栓やコレステロール沈着などの原因で詰まって、一部の脳細胞に血液が流れなくなり、脳機能の低下を引き起こします。脳出血は脳血管が破れて出血し、その部分の脳細胞が死滅したり、たまった血液によって圧排されたりすることで様々な症状が現れます。

このように認知症といっても型があり、その原因が異なるわけです。もちろん、紹介した3つのタイプ以外にも、前頭側頭型認知症や進行性核上性麻痺などさまざまあり、そのすべてを完璧に診断できるわけではありません。

B「どんな原因であってもいいよ!認知症になっているなんてショックだわ。」

A「そういわれる気持ちは良くわかります。しかし、原因をはっきり突き止められれば、より確かな進行予防の治療や、症状への対処ができます。もう少し追加で検査をしましょう。」

原因が違えば治療も違いますし、細かな症状も違うので可能な限り確定診断をつけたほうがいいでしょう。しかし、ここから先は一般的な診療所や小さな病院では困難な検査が多く、それ相応の費用が掛かります。

A「まずMRI検査を行います。」

CT検査は水頭症や硬膜外血腫脳萎縮などの形態異常の精査に優れていますが、MRI検査は脳梗塞や脳腫瘍などの鑑別に優れています。MRI検査を行うことで、気が付いていない微小な脳梗塞や脳出血がわかります。この検査を受けることで血管性認知症の可能性がわかります。時間は30分程度、検査だけで費用は5000円程度がかかります。

A「MRI検査の結果、血管性認知症の可能性は低いと考えます。次は脳血流SPECT検査を行いましょう。」

脳血流SPECT検査とは、脳血流低下の有無を画像にして評価判別できるため、CTやMRIという検査とは異なります。アルツハイマー型とレビー小体型では脳血流低下部位が異なるため、脳血流の低下部位を画像化することでより確実な診断に近づけます。DaTSCAN(ダットスキャン)というものを使用すると、ドパミン神経の変性・脱落が生じているレビー小体型認知症ではDaTSCANの集積が低下しますが、ドパミン神経の変性・脱落を生じない健常者やアルツハイマー型認知症ではDaTSCANの集積に低下は見られません。この違いから鑑別が可能になります。ただしやはり高価な検査になり検査だけで2~3万円程度の費用がかかります。

A「様々な検査お疲れ様でした、お陰様でアルツハイマー型認知症の可能性が最も高いとわかりました。今後は可能な限り進行を抑え、穏やかな日常生活が送れるようにサポートしていきますね。」

いかがでしたでしょうか?もちろん患者さんの年齢や様々な背景からすべての人にこのような診療が行われるわけではありません。ただ認知症診療はとっても奥深いということがわかっていただけたでしょうか?
冒頭でも言いましたが、多くの人が認知症になる時代です、少しでも心配ごとや不安があれば恥ずかしがらずに、かかりつけの医師に相談しましょうね!

参考文献:認知症疾患診療ガイドライン2017 日本神経学会病気が見える7 脳・神経 第2版 MedicMedia
村上 友太

村上 友太(医師、医学博士)

福島県立医科大学医学部卒業後、同大学脳神経外科学講座にて研鑽を積む。福島県立医科大学脳神経外科学講座助教を経て、現在は青森新都市病院勤務。脳神経外科専門医、脳卒中専門医、神経内視鏡技術認定医。

『このコラムの内容は掲載日時点の情報に基づいています。最新の統計や法令等が反映されていない場合がありますのでご注意ください。個別具体的な法律や税務等に関する相談は、必ず自身の責任において各専門家に行ってください。』

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